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「歴史で知る、枠にとらわれない自分らしさの見つけ方」【ひふみフォーラム2021春 開催レポートvol.1】

5月22日(土)にオンラインで開催した「ひふみフォーラム2021 春」の模様を、2回に分けてお届けします。
ゲストに株式会社COTENの深井龍之介さんをお迎えした今回のセッションは、レオスの株式戦略部シニア・ファンドマネージャー 佐々木、マーケティング部 赤池ともに歴史系Podcast「コテンラジオ」の大ファンだったことから、実現いたしました。
いま歴史を学ぶことの面白さや時代の捉え方、歴史を通じて見えてくる個人の生き方へのヒント、そして日本の行く末まで…!? 盛り上がったセッションの様子を、ダイジェストでお届けします。

■深井龍之介さんプロフィール:
大手電機メーカーの経営企画、2社のベンチャー企業取締役を経験。現在も複数のスタートアップ企業の取締役を兼任しながら株式会社COTENの代表を務める。歴史データベースを作成中。会社の広報としてPodcastで「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を放送中。2019年度Japan Podcast Awards大賞とSpotify賞をダブル受賞。Apple Podcast総合ランキング過去最高1位を獲得。

時代が歴史を求めている?今の自分の常識を疑ってみる

大人気Podcast「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」という時代を捉えたコンテンツを提供しながらも、経済には疎いとおっしゃる深井さん。事業家としても一貫してテーマに据える「歴史」について語りだすと、テーマに通じる金言がゴロゴロと出てきました。


赤池:
今回は深井さんをお迎えしたので、テーマを「歴史で知る、枠にとらわれない自分らしさの見つけ方」とさせていただきました。深井さんご自身は歴史をどういうふうに捉えているんでしょうか?

深井さん:
僕自身が歴史に興味があるから勉強しているっていうのも一番なんですけれども、今この2021年という時代が、歴史を知ることを求めているな、という感覚が強くあります。
現代って常識が変遷していくスパンが短くて、歴史上初めてのスピードに突入していますよね。古代や中世であれば2〜300年間くらいかけて変わるような常識が、10年単位とかでどんどん変わってしまう。昔良かったことがダメになったり、その逆もありますよね。たとえばLGBTQのような話題に関しても、どんどん常識が更新されていく時代です。
そんな時代に歴史を学ぶって、僕はすごく意味があるな、と思っているんです。
なぜなら、歴史を学ぶとまったく違う常識に出会えるんですね。僕たちが現代で当たり前だと思って生きてることが、実は全然当たり前ではないということが、感覚として分かってくるようになります。
今の自分の常識を客観的に俯瞰して見られるようになって初めて、自分が生きていくにあたって、どの価値観を選んで生きていくかってことを選択できるようになるんですよ。
そうすると、常識がコロコロ変わるような時代でも、柔軟に対応しながら生きていけるんです。

佐々木:
今って株式市場のなかでも価値観や常識がガラッと変わっていて。その変遷に気づかないと勝てないので、やっぱり歴史は課題として非常に面白い。なにかヒントないかって探しにいく先って過去になりますね。

赤池:
投資って、未来を予想していくものっていうイメージもありますけど、歴史が活かせるものですか?

佐々木:
一般的に「過去は変えられないけど、未来は変えられる」と言われると思うんですけど、僕は逆に「過去は変えられるけど、未来は変えられない」と思ってるんですよ。
たとえば現代の価値観のメガネで過去を見てしまったら酷い時代なんて山ほどあって。でも違う文脈で見たなら、その同じ時代がとても良い時代に見えるかもしれない。自分のスタンスを変えることで、過去の認識って変わるだろうな、と。
一方でたとえば、日本の人口動態を見たらもう少子高齢化の勢いは止めようがないですし、5年先の人口がこうなってるであろうという予想の精度って非常に高い訳です。だから未来を予測するというより、着地点がほぼ決まっているところに対して、アクションを起こしている企業を見つけに行く、という発想をしていますね。

深井さん:
僕も、過去って認識とか切り口によっていろんな見方ができると思っていて。基本的に人間がどう認知したかっていう認識の積み重ね、それが記録されてるのが歴史なんですよね。
歴史をどう活かすかという文脈で考えると、傾向ってあるんですよね。プレイヤーである人間というのはずっと一緒なんだけど、ステージである環境が時代によって変わるっていう感覚。
そういう意味で、どういうところに投資するかという大括りな選定は確かにできるのかな、と思ってワクワクしています、今の話聞きながら。

佐々木:
深井さんが投資家やったら無茶苦茶リターン出せる人になると思いますよ、軸があるんで。

日本の◯◯問題が、社会構造を変革する?

深井さん:
いろんな時代を勉強していくと、さっきの常識を俯瞰してみるっていう意味でも、複数の点から時代を見られるので、立体感であるとか輪郭みたいなのがすごくよく分かるようになってくるんですよね。
時代や社会って進んでくベクトルがあると思うんです。すごくゆっくりとメインストリームというか、畝りになって進んでいる感じで。
現代をあらゆる時代から俯瞰的に見ることによって、今どういう方向に畝っているのか、これから人類がどうなっていくかっていうのが、なんとなく分かってくるのが、歴史を勉強する醍醐味ですね。

赤池:
これから、どんなふうに畝っていくと?

深井さん:
私見なので当たるかどうか分からないですよ。ちょっとぶっ飛んだこと言いますけど……これまでの時代って、OS(オペレーションシステム)のような基礎概念があるんです。
1800年頃のフランス革命以降、人類のOSっていうのは「人権」を使ってるんですよ。ちなみにその前は「信仰」っていうのを使ってたんです。
それで今、その人権システムの質が、ちょっと変わりそうだと思っていて。変わるときにも実は共通点がありまして、それまでの価値観を支えて主要な機能を果たしていた機関が、その仕事をできなくなっていくっていう兆候があるんです。
その兆候で顕著なのが、日本の介護問題です。おそらく近い将来日本は、介護・福祉を今までのようには提供できなくなっていく。国家が今まで担っていた役割を、担えないという事態が発生する。そうすると国家というものが、今まで捉えられていた枠から外れていくんですね。
「人権」のOSによって造られている国家は、それを守りたいからこそ頑張って、福祉費が増大し続けて、構造的に破壊に向かっていく状態になる。なので、たぶん常識の方がちょっと変わるっていう事態が起こるだろう、って思ってるんです。

佐々木:
僕らもそういう文脈で調べている会社さんがありますね。
たとえば介護士の給与が少なくて問題だから、システム化して介護士の負担を下げようとか、アームロボットみたいなのを作って楽にしようとか、そういう部分で努力している会社さんが増えてきてるんですよ。
でも背景にあるこのシステムもう無理だよねっていうのは、僕らとしても理解をしていて、10年後どうなってるんだろうってチーム内でも議論になったり。やっぱり歴史は勉強した方がいいんだって思いました。

深井さん:
人類っていうのは今までにたくさん、同じことをしてきてる訳です。その新しいOSがどんなかは分からないけど、好奇心はあるんですよね。死ぬまでに見られるかな、と。

佐々木:
もしかしたら僕らは次のOSで介護される側になるかもしれないってことですね。

好奇心から深掘りできる、世界史データベースの可能性

株式会社COTENでは、3500年分の世界史情報を体系的に整理し、社会や人間の傾向やパターンを誰もが抽出できるように、世界史の一大データベースを作成するプロジェクトを進行中だそうです。
どのようなものになるのでしょうか?

深井さん:
たとえば歴史上の登場人物から大器晩成型の人間だけを抜き出して、その人たちの共通点を見るとか、部下に殺された人だけを見てみるとか。あとマップ上で、いつどこでどんな戦争があったかとか、誰が生まれたかとか、どんな発明があったかとか。そういうものを見ることができるデータベースです。

赤池:
そこにアクセスしやすくなるって凄い価値ですね。資産運用の世界でも活かせたりしますか?

佐々木:
レオスは財務データ以外のものを使って、人があんまりやってないような軸で会社を評価することをけっこうやっているんですよ。このデータベースが出たときに、この会社さんって歴史上のこの人に似てるな、みたいなことができたら、すごく使ってみたいと思います。

深井さん:
いろいろ見て、こういうタイプの人たちはこういう時代だと活躍するんだっていうのが分かってくると、すごく面白くなってきます。

赤池:
最後に、見ていただいてる皆さまへ一言いただけますか?

深井さん:
歴史に限らず、好奇心を増やしていくことがすごく大切な時代になったと強く感じてます。
慎ましく生きなさいとか、与えられたことをちゃんとやりなさい、という時代もありましたけれども、今って、選択肢が非常に多いですし、人生100年時代にもなっているので、これからの自分の人生を決めていかないといけない。
そのときに義務感でやるよりも、なんか好きとか、面白いなってエネルギーでやる方が強いんですよね。そこをブーストさせていくことの大切さみたいなものは、僕もすごく感じています。

赤池:
深井さん、佐々木さん、本日はありがとうございました。


好奇心や自分らしさを追求し続けている深井さんのお話、そして壮大な歴史には、私たちにとって多くのヒントがあるのではないでしょうか。
まずは、佐々木が目から鱗が落ちたという「コテンラジオ」【S12.お金の歴史】を聴いてみませんか?


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