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『ありがとう』で広げる人と企業の可能性 田中弦さん×藤野英人×白水美樹鼎談【ひふみフォーラム2023レポート vol.1】

投資信託「ひふみ」シリーズのブランドメッセージである「次のゆたかさの、まんなかへ」。変化し続ける社会で私たち一人ひとりの「次のゆたかさ」をお客様と共に考えるイベントが「ひふみフォーラム」です。
今年は日比谷国際ビルコンファレンススクエアにて開催しました。レオスにとっては久しぶりの大規模なオフラインイベントになりました。

今回のレポートを担当するのは、今年の4月にレオスに入社した経理財務部の田崎です!
レオスの社員として初めて参加したイベント、その当日の様子をご紹介します。
第一部のゲストは、企業カルチャーの変革や心理的安全性のプロフェッショナルである田中 弦さん(Unipos株式会社 代表取締役社長CEO)です。田中さんには、働く人が最大限に能力を発揮し長期的に成長する組織をつくるにはどんなことが必要なのか、当社代表取締役会長兼社長 CEO &CIO の藤野英人と専務取締役CHRO白水美樹との鼎談形式でお話を伺いました。
私は新社会人なので、どうやったら会社に貢献できるのか、お客様のためになる仕事ができるのかを日々考えています。この度、田中さんのお話を聞いて「自分にもできることがある」と新たな発見があったので、皆さんにもぜひお伝えしたいです。
左から、藤野・田中さん・進行役の白水美樹

<ゲストのご紹介>
田中 弦(たなか ゆづる)さん
Unipos株式会社 代表取締役 CEO
1999年にソフトバンク株式会社のインターネット部門採用第一期生としてインターネット産業黎明期を経験。 2005年アドテク分野でFringe81株式会社を創業。2017年8月に東証マザーズへ上場。2021年社名変更後、従業員同士で称賛とボーナスを送り合う「Unipos」を開始、370社に採用。カルチャー変革、人的資本投資、心理的安全性のプロ。

レオスでは「ありがとう」という感謝のメッセージを、ポイントとともに贈ることができるUnipos(ユニポス)のサービスを導入しています。私はこのサービスがどんなことに役立つのか、まだよくわかっていませんでした。「ありがとう」と伝えることは、そんなに良いことなんだろうか?些細なことのように思えるけれど、具体的にはどんな効果があるんだろうか?と疑問に感じていました。

「ありがとう」と伝えることは、他人も自分も幸せにする

田中さん:
実は、同僚を褒める人が会社の中で増えれば増えるほど、仕事のやりがいが向上するという研究結果が出ています。なぜかというと、感謝を伝えるとき、「この人はこういう風に言ったら喜んでくれるかな」とか、「この人の仕事ぶりはこうだな」というようなことを考えますよね。考えれば考えるほど、会社にとってその人の行動や仕事が重要なのだと学習できるのです。
人を褒めたり感謝を伝えるのは恥ずかしいと感じる方もいるかもしれないですけど、実はそのプロセスはすべて自分の幸せ・やりがいにつながっています。
また重要なポイントとして、感謝のメッセージが全社員に公開されるということがあります。ありがとうの輪を広げるためには「誰がどんなことで褒められているか」を知ることが非常に大事だと思っています。

実際のUniposメッセージ

藤野:
私も田中さんと同じように、社内に「褒める文化」を作ることが大事だと考えていました。私が受けた学校教育では、駄目出しが教育だと思っている先生がすごく多かったからです。「できていること」よりも「できていないこと」を指摘することが重要だと、子どものときから親や、学校の先生によって教育されていたような気がします。
それが大人になっても引き継がれ、社会に現れていると思います。

白水:
そのような考えだと、働くことがつらそうですね。

藤野:
日本人は仕事を「懲罰」だと思っているところがありますよね。自分が受けるストレスと時間をお金に変えることが仕事だという考え方をしている人が多いように思います。「仕事は楽しいよ」と言うと、上司や同僚から「お前は遊んでいるのか、真面目にやれ」というふうに言われたりすることがある。
このような懲罰的な考え方が、日本企業の競争力を失わせているのではないかと思っています。

「ありがとう」と伝える過程で、相手のことをよく知り信頼関係を築くことができる

白水:
お二人の考えの根底に「ありがとう」を言うことで何か組織に良い効能がもたらされるというような文脈があると感じたのですが、具体的にご説明いただけないでしょうか。

田中さん:
会社やチームの中でお互いのメンバーどうしのことを全然知らないと、一緒に仕事をしづらいですよね。別の部署やフロアにいるメンバーや、そもそも勤務地が違うメンバーとは「まったく話したことがありません」ということも起こります。そのような状態で、そのメンバーに対して何か意見を言うのは難しいです。
でも普段、直接仕事で関わりがない相手でも、その人の活躍ぶりを知ることができれば、親近感がわいてきます。そのときに「私、これやりました」という自己アピールではなく、他の人から感謝されたり、褒められている状況を見たり聞いたりすると、組織の中でのその人の仕事っぷりや人柄が認識できて、より意見を言いやすい環境になると思っています。

最近、ある大手企業の工場がUniposを導入いただいたのですが、その工場では「10年ぶりに会社で褒められた」という方が続出しているようです。
その工場の人達に「どうして褒められることがなかったんですか」と尋ねると、働く場所が離れていて普段会わないし、互いに興味・関心を持つ術がなかったそうなのです。

藤野:
業績には表れにくい仕事でも、感謝によって評価を可視化することで会社に対する信頼度も上がると思います。影の仕事はやるだけ損だなあと思う会社と、隠れた努力が可視化されてちゃんと評価される会社、どちらで働きたいかというと、これは明らかではないでしょうか。

心理的安全性の高い職場とは?心理的安全性=優しさではない。

<心理的安全性とは>
会社やチームの中で、どんな年齢や性別、立場の人でも気兼ねなく、相談したり意見を出し合ったりことができる環境を指すといわれています。

白水:
近年、「心理的安全性」の高い組織をつくることが注目されています。田中さんが考える心理的安全性の高い職場というのはどのような職場でしょうか。

田中さん:
「安全性」という日本語から感じるニュアンスで、やわらかく優しいイメージを持つ人が多いかもしれません。でも、実際には少し違います。
心理的安全性が高い組織にいたら、楽に仕事ができるかというと全然そんなことはありません。例えば上司にとっては自分に対しても意見がどんどん出されて大変な面があるけれども、最終的には質の高い仕事ができることが前提の概念です。
心理的安全性が高いチームとそうでないチームとの違いというのは、立場に関係なく意見を闘わすことができる場面があるかどうか。その面では、ある意味で厳しい面もあると思っています。

藤野:
これについて難しいのは、「反対意見というのは人格攻撃ではない」という文化をどうやって醸成するのかということです。プレーンに反対意見を表明できるか、また、それを受けとめる人は「人格攻撃だ」と考えないで、ビジネスをやるために必要なことだと理解することが必要です。
でも一朝一夕ではできないと思いますので、まずお互いのことをよく知って信頼するというところから始めていくことが大切ですね。

白水:
「ありがとう」という一言にしろ、反対意見にしろ、言い出しづらさみたいなものがあると思います。これを突破するコツみたいなものって何かないでしょうか?
日本人の気質として、「こんなことを言ったら傷つけてしまうから反対意見も言えない」のような、ある種の奥ゆかしさみたいなものがあると感じています。

田中さん:
まず上司は部下に意見を過剰に期待してはいけません。つまり、上司が部下に対して「発言しないのは悪いことだ」と指摘するのは間違いということです。
部下の立場に立ってみれば、自分の人生を守らなければいけないですし、家族も守らなくてはいけないので、勇気を出して、恥をかいてでも反対意見を出したいという人って本当にレアです。
変わらなければいけないのは上司の行動や会社全体の雰囲気です。それらを変えないと、とても自由に発言できるような組織にはなりませんね。

心理的安全性という言葉は初めて聞きました。なんとなく「優しい」イメージがありますが、必ずしもそうではないということが印象に残りました。私はもちろん優しい職場の方が嬉しいですが、会社として目指すべきは質の高い職場だと思います。社員がお互いを信頼し、意見を言い合える職場を作る目的で「ありがとう」を伝える必要があるのだと理解することができました。

小さな感謝から生まれる大きなエネルギー

白水:
「ありがとう」と言える職場が一人ひとりのモチベーションを高めて、それがチームへの信頼感につながり、さらに会社の業績につながってくるというような考えなのでしょうか。

田中さん:
私はそう信じています。みんなが下を向いて元気がない会社って、大変ですよ。
そして僕がもう一つ信じていることは、どんな会社でも必ず変われるということです。
大きな変化というのは、実は小さな感謝から生み出せると信じていますし、本当に会社ってあっという間に変わるものだとも思っています。

藤野:
私は、投資というのはエネルギーを投じて未来からのお返しをいただくことだと思っています。特にビジネスで成功するためには、お客様に喜んでもらえないと会社は永続しません。お客様に喜んでもらうと、それが売上になり、それが広がってビジネスが拡大します。商売をする上では、相手に喜んでもらう、楽しんでもらうということが重要です。

特別な能力がなくても、より多くの人を幸せにできる人だったら、より多く仕事ができるし、感謝もされますよね。たくさん友達ができるかもしれません。それも人生においてはひとつの成功ではないでしょうか。

白水:
私たちが今すぐ簡単にできる投資が「ありがとう」と伝えることですよね。

藤野:
そうですね。私はコンビニエンスストアに行った時になるべく大きな声で「ありがとう」と言うようにしています。もちろん最初は恥ずかしいと思いましたが、意識して言っています。
ビジネスで成功している人や、投資家として長い間成功している人は、やっぱり「ありがとう」と言うことを大事にしている人が圧倒的に多いと思います。

白水:
自分が発する「ありがとう」が、誰かのやりがいにつながったり、働くことは楽しいなと思うことにつながって、回りまわって自分の生活が良くなることにつながるのではないかと思います。
日本企業も、この「ありがとう」が増えることによって、伸びしろがあるのではないでしょうか。

田中さん:
あると思います。
私がこうしてイベントに参加しているときも、多分うちのエンジニアが常にUniposのシステムを監視してくれているわけです。ありがたいですよね。
実は誰もが、多くの人に支えられて生活しています。そうして支えてくれている人に、少しでも感謝の気持ちを返してあげようという考えや行動が、会社や組織の中でたくさん巻き起これば日本企業は変わると思うんです。

藤野:
その通りですよね。
私たちは無いものに対して不幸を感じますが、実は、あるものに目を向けると非常に多くのものを持っているということを感じます。

田中さん:
漢字にすると「有難い」ですからね。
仕事をするのは当たり前でしょうとか、ここは綺麗で当たり前でしょうとか、涼しいのは当たり前でしょうって考えるのか、それとも、「いやあ、有難いね」と考えるのかで大きく違います。
考え方ひとつで「ありがとう」という言葉を言える場面はもっと増えると思います。

白水:
皆さんの心の中に潜む「ありがとう」をぜひ口に出して、この世の中をありがとうでたくさん埋めつくしたいなと思います。
そして、それによって私たちの生活がより良くなっていくというような社会構造になるとよいですね。

今回のお話を聞いて、Uniposを通して感謝を伝えることで、活気あふれる職場をつくるイメージができてきました。
これからは、レオスメンバーの気遣いや行動など、些細に感じることでも「ありがとう」を伝えていきたいと思います。そうすることで「ありがとう」を伝えた相手だけではなく、その様子を見ている他のメンバーにも良い影響がありそうです。
楽しく働ける職場、難しい仕事でもチャレンジできる職場を自分がつくっていくという意識を持って、積極的に「ありがとう」を見つけに行きたいと思います!


>>>ひふみフォーラム2023はYouTubeにてアーカイブ視聴可能です!
(田中弦さん×藤野英人×白水美樹鼎談は06:00頃~)


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