資産家だけじゃない!遺言書を作るメリットと書き方の例
本連載は、なかなか馴染みはないけれど知っておいて損はしない、相続や資産活用についてお伝えする連載です。いざという時に家族の間で慌てたり、争ったりすることがないよう、現役世代の方もぜひ参考にしていただきたいと思います!
前回の記事はこちら。
今回の記事では、相続にそなえて作成する「遺言書」がどのようなものか、また書き方の事例についてお話します。
田村 啓樹(タムラ ヒロキ)
オンライン証券で勤務した後、2021年11月にレオス・キャピタルワークス入社。現在はSBIグローバルアセットマネジメント株式会社のグループ会社で金融教育事業に取り組む。フィナップ株式会社 代表取締役社長、ファイナンシャルプランナー。
遺言書とは何か?
遺言書とは、自分の財産を「誰に」「どれだけ」引き継ぐかを決めておくための、法的な効力をもつ書面です。
通常、遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続人が、全員で話し合って分け方を決める「遺産分割協議」を行ないます。しかし、遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容が優先されます。
被相続人の意思を相続に反映させるためにも、特に以下のようなケースでは遺言書が必須、あるいはその必要性が高いと言えます。
- 特定の子どもに家を継がせたい、多めに相続財産を遺したい
- 事実婚の配偶者やお世話になった知人、慈善団体など法定相続人以外に財産を遺したい
- 相続人のうち死亡している人や行方不明の人がいる
- 再婚をしている
- 相続人の数が非常に多い
- 相続財産の大半が不動産である
「遺言書なんて、資産家が書くものだろう」「うちの家族は仲がいいから、揉めるはずがない」そのように考えてはいないでしょうか。
家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割協議の調停事案のうち、35%は相続財産が1000万円未満、5000万円未満までで78%を占めます。(※)
また、調停のうち6割以上は6ヵ月超の審理期間を要しています。(※)
これらのデータからわかるのは、相続財産が少ないからといってトラブルにならないとは限らないこと、一度トラブルになれば時間や金銭、心理的に多くの負荷がかかるということです。
だからこそ、遺産分割に関わるトラブルを未然に防止できる遺言書は、被相続人の意思を伝えるだけではなく、家族の関係を守るためにも重要な手段と言えます。
(※)令和6年司法統計年報3家事編 第49表および第52表より
自筆証書遺言と公正証書遺言
遺言書には、大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。
◆自筆証書遺言
遺言書の全文や日付、氏名などを自筆で書き、押印します。
メリット:費用がかからず、いつでも一人で作成することができます。
デメリット:形式に不備があると無効になる可能性があるほか、遺言書の存在を知らせていなければ相続発生時に見つからない可能性、改ざん・隠匿といったリスクもあります。
また、自筆証書遺言は相続発生後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
(参考)自筆証書遺言書補完制度を利用すれば、自筆証書遺言を法務局で保管することができるため、遺言の紛失・改ざん・隠匿といったリスクは抑えることができるほか、検認の手続きが不要になります。
◆公正証書遺言
公証役場で公証人が内容を聞き取り、作成します。遺言者が高齢や病気などで公証役場にいけない場合は、自宅や病院に出張してもらうこともできます。
メリット:公証人が作成するため、基本的に形式面での不備を心配する必要がなく、原本が公証役場に補完されることから、紛失等の恐れがありません。また、家庭裁判所での検認が不要なため、すぐに相続手続きに入ることができます。自筆証書遺言と異なり自筆する必要がないため、判断能力さえあれば寝たきりなどで体が動かせない状態でも遺言書を作成することが可能です。
デメリット:相続財産に応じて費用がかかる(司法書士や弁護士のサポートを受ける場合はその費用も)ほか、2名以上の証人が必要となります。
このように、自筆証書遺言と公正証書遺言にはメリットとデメリットがありますが、どちらにも共通するのは、認知症になるなどして意思能力がなくなってしまうと作成できないということです。だからこそ、早めの対策が必要と言えます。
付言事項で伝える家族への想い
遺言書の書き方の例と記載するべき事項
自筆証書遺言は、前述のとおり遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自著し、押印することで成立します。(財産目録などの添付書類については法改正により印刷でも可能に)
どのような紙に書いても構いませんが、消えないペンで書いてください。
その他、遺言書を書くうえで代表的なポイントには以下のようなものがあります。
- 不動産に関する記載は登記事項証明書のとおりに記載をする
- 預貯金の記載はなるべく詳細に、ただし金額は書かない
- 証券会社の預かり資産もなるべく詳細に書く。ただし、個別銘柄は書かなくてもよい
- 遺言執行者は受遺者でも構わない
これ以外にも財産や相続人の状況、相続で実現したい内容によっては、書くべき内容が様々ですので、必要に応じて専門家のサポートを受けるようにするのがよいでしょう。
※以下の遺言書の例は一般的な情報をもとに、あくまで参考として記載しています。記載方法や内容について、法的な正確性を保証するものではありません。
遺言書を作成するには財産をしっかり把握したり、相続人の状況をよく整理しておくことが必要になります。時間がかかることを前提に、早めに準備を始めたいですね。
次回は、終活における重要なツールとして注目されている「エンディングノート」についてお話します。
第4回 自分らしく、安心して人生をおくるための「エンディングノート」
※本記事は、一般的な解説であり、個別の法律相談ではありません。
具体的な事案については専門家(弁護士・司法書士等)にご相談ください。
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