「ひふみ投信」運用責任者からのメッセージ
ひふみをご愛顧いただいている皆様へ
この数日、日本の株式市場は大きく変動しています。ニュースをご覧になり、不安を感じている方も多いと思いますので、現在の状況をできるだけわかりやすく整理してお伝えしたいと思います。
今回の下落の直接のきっかけは、中東情勢のさらなる緊張です。
イスラエル・アメリカとイランをめぐる軍事的な衝突が拡大し、世界の石油輸送の重要なルートであるホルムズ海峡が事実上封鎖され、物流の混乱が深刻化しました。その結果、原油価格は一時1バレル110ドルを突破する水準まで上昇し、エネルギー価格の高騰が世界経済に与える影響が意識されるようになりました。
日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しています。そのため、原油価格の上昇は日本経済にとってコスト増加の要因となりやすく、株式市場も敏感に反応します。今回の日本株の下落も、こうした不安が広がったことが大きな背景にあります。
ただし、今回の市場の動きは中東情勢だけで説明できるものではありません。世界の金融市場には、もともといくつかの不安要因が積み重なっていました。
一つは、世界の信用市場への懸念です。
ここ数年、銀行以外の投資ファンドなどが企業に融資を行なう「プライベートクレジット市場」が急速に拡大してきましたが、最近になって一部で破綻や信用不安が表面化し、金融市場全体がやや慎重な姿勢になりつつありました。金融市場では、信用に対する疑いが出始めると、投資家は一時的にリスクを避ける行動をとる傾向があります。
また、株式市場そのものも、この数年はかなり強い上昇を続けてきました。
AIへの期待を背景に、世界の株価は大きく上昇し、特にアメリカのハイテク企業を中心にバリュエーション(企業価値の評価)は高い水準まで来ていました。こうした状況では、何か大きなニュースが出たときに、市場が調整しやすい状態になります。
さらに最近は、AIがさまざまな知的サービスやビジネスモデルを変えてしまうのではないかという議論も広がり、産業構造の変化に対する不安も一部で意識され始めています。新しい技術への期待と同時に、既存のビジネスへの影響を心配する声も出てきており、市場心理はやや神経質になっていました。
日本株について言えば、もう一つ特徴的な背景があります。
ここしばらく、日本企業の収益改善や政治への期待を背景に、日本株はかなり強い上昇を続けてきました。海外投資家の資金も多く流入し、市場にはやや熱狂的とも言える雰囲気が出始めていました。こうした局面では、何か大きなニュースが出ると、利益確定の動きも重なり、株価が大きく動くことがあります。
つまり今回の下落は、中東情勢という一つの出来事だけではなく、
・エネルギー価格の上昇
・信用市場への不安
・AI時代の産業構造の変化
・株価の高いバリュエーション
・日本株の急ピッチな上昇
といった複数の要因が重なった結果、市場が大きく反応した局面だと言えます。
ただし、市場というのは不思議なもので、不安が表に出ると、その多くは次第に株価に織り込まれていきます。私も30年以上このような厳しい環境を何度も体験しています。
実際、過去の金融危機や地政学リスクの局面でも、最初は強い下落が起きましたが、時間が経つにつれて市場は徐々に冷静さを取り戻してきました。
もちろん、すぐに株価が元の水準に戻るとは限りません。
中東情勢、エネルギー価格、世界の信用市場など、いくつかのテーマが同時に動いているため、市場が神経質な状態が続く可能性もあります。だからこそ、私たちは短期の株価の動きよりも、企業の本当の価値を見ることを大切にしています。
株式市場は短い期間では大きく揺れますが、長い時間軸で見ると、企業の成長とともに価値を生み出してきました。今のように不安なニュースが多いときほど、落ち着いて企業の力を見つめ、長い視点で投資を続けていくことが重要だと考えています。
これからも皆様の大切な資産を預かる運用者として、誠実に、そして長期的な視点で運用に取り組んでまいります。
引き続き全力で運用してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役社長
ひふみ投信運用責任者
藤野 英人