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「基準価額」はどうやって見たらいい? 【基礎からわかる投資信託#5】

お客様から「ひふみは基準価額が高くて買えない」といった声をいただくことがよくあります。基準価額は「投資信託の値段」と表現されることもあり、基準価額が高い投資信託は直観的には割高に感じられます。しかし実際には、基準価額が高いから割高、低いから割安といった判断をすることはできません。適切な投資判断をするためには基準価額についてしっかり理解しておく必要があります。

そこで今回は、基準価額について算出方法などの基本をおさえた上で、理解しておくべきポイントをご説明します。

基準価額とは

基準価額とは、投資信託が現時点でどのくらいの価値があるのかを、単純に単位口数当たりで示したものです。基準価額は運用会社によって毎営業日計算され、公表されます。投資信託の購入や換金は基準価額によって行なわれるため、購入時の基準価額と換金時の基準価額の差が投資家の損益となります。

基準価額の算出方法

投資信託の「純資産総額」を「受益権総口数」で割ったものが基準価額です。

分子の「純資産総額」とは、投資信託が保有する資産の時価評価額の合計から運用管理費用などを差し引いたものです。分母の「受益権総口数」とは、投資信託のすべての受益者が保有する口数(投資信託を売買するときの取引単位)の合計です。

したがって、投資信託の組入資産の値動きとともに純資産総額が変動し、それに伴って基準価額は日々変動します。例えば、投資信託に組み入れている銘柄の株価が上昇すると純資産総額が増加し、基準価額は上昇します。逆に組入銘柄の株価が下落すると純資産総額は減少し、基準価額は下落することになります。

上記の定義では、基準価額は1口あたりの金額となります。しかし実際には、1万口あたりの金額を基準価額として表示するのが一般的です。多くの投資信託では、運用開始時の当初の基準価額を1万口あたり1万円として設定し、運用期間中も1万口あたりの金額を基準価額として公表しています。本稿においても以後特に断りがない限り、1万口あたりの金額を指して「基準価額」とします。

買付や解約で基準価額は変化するの?

投資家が投資信託を購入するとき、購入した分の金額は投資信託の資産に加算されます。つまり、純資産総額が増加します。では、純資産総額の増加に伴って基準価額も上昇するかというと、この場合、基準価額は変化しません。なぜなら買付の場合、分子の純資産総額が増加すると同時に、分母の受益権総口数も増加するためです。

投資家が投資信託を解約するときも同様です。解約によって純資産総額は減少しますが、それと同時に受益権総口数も減少するため、基準価額は変化しません。

このように買付や解約による資金の流出入によって投資信託の基準価額が変動することはありません。

基準価額の高い投資信託は割高?

投資信託の購入を検討しているお客様の中には、「基準価額が高い投資信託は割高な気がして買いづらい」と考える方もいらっしゃるかもしれません。実際のところ、基準価額に割高・割安はあるのでしょうか。

結論からいえば、基準価額の水準によって割高・割安を判断することはできません

基準価額は運用開始時点からどれだけ変化したかを示すもの

例えば、投資対象が同じで全く同じ値動きをする2つの投資信託AとBがあると仮定します。これらの投資信託は運用を開始した時期が異なるものとします。このとき投資信託A、Bはそれぞれ異なる基準価額がつくことになります。

これは、運用開始時点の相場とは無関係に当初の基準価額が設定されるためです(多くの場合、設定時の基準価額は1万円に設定されます)。つまり、基準価額とは、運用開始時点を基準としてそこからどれだけ変化したかを示すものといえます。

このように資産構成が全く同じで全く同じ値動きをする投資信託があったとしても、運用を開始する時期が違えば基準価額の水準は大きく異なるということになります。

※この図はイメージであり、特定の商品の基準価額推移を示すものではありません。

投資家の損益を決めるのは「購入時からの変化率」

投資家の損益を決めるのは「購入時点の基準価額からの変化率」です。投資信託AとBは基準価額の水準が異なりますが、投資金額と取引のタイミングが同じであれば、どちらを購入しても得られる運用成果は同じです。

具体例で考えてみましょう。投資信託Aに投資するケースと投資信託Bに投資するケースの2つの場合を考えます。どちらの場合も投資金額と購入・解約のタイミングは同じものとします。

購入時点における投資信託Aの基準価額を10,000円、Bの基準価額を15,000円とします。投資金額を30,000円とすると、投資信託Aに投資するケースでは30,000口、投資信託Bに投資するケースでは20,000口を購入できることになります。
解約時点の基準価額は購入時点から10%上昇し、投資信託Aでは11,000円、投資信託Bでは16,500円になったとします。このとき、それぞれのケースで投資家が受け取る換金代金はいくらになるでしょうか。

投資信託Aの場合、換金時の基準価額(1万口あたり)が11,000円で30,000口を保有しているので、換金代金は11,000円×3=33,000円となります。

投資信託Bの場合、換金時の基準価額(1万口あたり)が16,500円で20,000口を保有しているので、換金代金は16,500円×2=33,000円となります。

この例では、どちらのケースでも投資家が受け取る換金代金は同じ33,000円となることがわかりました。投資金額は30,000円だったので、どちらのケースでも収益率は10%となります。

※この図はイメージであり、特定の商品の基準価額推移を示すものではありません。

この例からわかるように、投資家の損益を決めるのは「購入時点からの変化率」であり、基準価額の水準は関係ありません。基準価額の水準を比較することに意味はなく、そこから割高・割安の判断をすることもできません。したがって、投資信託の取引を行なう際には、現在の基準価額の水準に注目するのではなく、経済環境や市場動向から組入資産に関する今後の見通しを判断することが重要です。

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