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給与明細を読み解くその⑤ 雇用保険のあれこれ【お金のあれこれ #5】

皆様の漠然とした「お金のあれこれ」を整理し、お金の不安を知っている安心に変える一助になることを目指す本連載。
前回まで三回続けて公的年金のあれこれをお伝えしました。今回は給与明細を読み解くシリーズの最終回、雇用保険について見ていきます。

深町

〈プロフィール〉
深町 芳(ふかまち かおり)
福岡市出身。
地元の金融機関を退職後、フリーランスを経て、2018年3月レオス入社。
福岡市にあるひふみ九州センターに駐在。
金融機関在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得し、資産形成に関わる仕事に長く携わる。
好きなものは、猫と歴史、神社仏閣めぐり。
夢は、年齢を気にせず健康である限り働いて、仕事の合間に仏像に会いに京都や奈良のお寺へいくこと。

〈プロフィール〉
三田村 英弥(みたむら ひでや)
福岡市出身。
地元の金融機関に4年間勤務。ひふみ九州センターで深町のセミナーに参加し、レオスへの転職を決意。2020年3月にレオス入社。金融機関勤務時は法人営業、金融商品に関する仕事に携わる。趣味は読書。何か新しいことに挑戦をしようと、プログラミングの勉強中。

三田村

今回は「雇用保険」がテーマです。三田村さん、雇用保険はどのようなものか知っていますか?

雇用保険ですか、失業したときにもらえるもの、という程度の知識しかありません。給与明細の控除の欄にも確かに「雇用保険」とありますが…。

そうですね。一般にはあまり関心がない制度かもしれませんね。実は失業した時以外にも給付されるものがいくつもあります。身近なところでは育児休業取得時の手当は雇用保険から支給されているんですよ。

失業時だけではない雇用保険の守備範囲

雇用保険は「政府が管掌する強制保険制度」、つまり、労働者を雇用する事業主は、加入を義務付けられている制度です。被保険者となるのは事業規模に関わりなく、労働時間が週20時間以上、かつ、雇用の見込みが31日以上ある者とされています。この条件を満たしていればパートやアルバイトの方も対象です。

雇用保険=失業保険とイメージされる方が多いと思いますが、そのほかにも、労働者の能力向上、雇用の安定など幅広く働く環境を守るための制度です。

まずは雇用保険の中でよく知られている「失業等給付」について見ていきましょう。正確には「基本手当」と言いますが、定年、倒産、契約期間の満了等により離職したとき、生活を心配せずに新しい仕事を探し、1日も早く再就職するために支給されます。

受給できるのは以下の2つの条件を満たす被保険者です。

1.ハローワークで求職の申込みを行い、就職する意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない=「失業の状態」にあること。
2.倒産・解雇など会社都合により離職した場合では、離職の日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること。倒産・解雇以外の場合は、離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。
(被保険者期間は1つの会社に継続して勤めていた期間だけでなく複数の会社で働いた期間を通算することが可能)

失業等給付は、いくらもらえるのですか?

離職直前の賃金をもとに計算されるので、ひとりひとり異なりますし、受給できる日数も被保険者期間によって違うんですよ。



「失業等給付」で受給できる1日当たりの金額を「基本手当日額」といい、以下の式で算出します。この時の賃金には賞与等は含まれません。かける率には45~80%と幅があり、賃金の低い方ほど高い率となります。また金額には年代ごとに上限・下限が設けられています。

基本手当日額の給付日数は次の表のとおりです。(2021年1月現在は「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」に基づき、雇用保険の基本手当の給付日数延長に関する特例が設けられており、対象であれば30~60日給付日数が延長となります)

勤めていた期間と年齢によっても支給される期間は違うんですね。

その通りです。ただ離職後すぐにはもらえないので注意が必要です。会社を辞めただけでは、雇用保険上の失業状態とは認められません。求職の申込みなどハローワークでの手続きが必要ですし、その後受給資格が決定されても7日間の待機期間があります。倒産や解雇以外のいわゆる自己都合での離職の場合はさらに3か月間給付制限があってこの期間中は定期的にハローワークで「失業の認定」を受けなければなりません(2020年10月1日以降に離職された方は、自己都合により退職した場合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が2か月となります。)。

私は前職を退職後、すぐにレオスに入社したので、手当はもらいませんでしたが、条件を満たしていなかったんですね。
はい、転職のための離職は、雇用保険上の失業ではありませんからね。続いて、介護休業給付・育児休業等給付について見ていきましょう。

介護や育児での休業もサポート

介護休業は、要介護状態にある家族を介護するために取得できるもの、育児休業は、産前産後休業に加えて産休後に取得でき、子どもを育てる労働者であれば男女を問わず利用できるもので、ともに労働者の権利として法律に定められています。
ただ、法律で定められていても休業期間中の生活が不安定であれば、安心して休むことができません。それを支えるために雇用保険から支給されるのが、「介護休業給付」「育児休業給付」です。

受給にはまず雇用保険の被保険者期間が介護休業開始以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上という要件があります。加えて介護休業、育児休業それぞれに定められた要件を満たすと以下の式で計算された額を受給できます。

給付額には上限があり、休業期間中に賃金が支払われている場合には減額されることがあります。介護休業給付、育児休業給付のどちらも、支給申請の手続きが必要です。手続きは勤務先を経由してハローワークで行います。

なるほど、失業した時以外にもいろいろと支えてくれるんですね。
はい、少子高齢化がすすむ中、子育てする人や介護する人を支えるといった側面があります。ちょっと雇用保険の話から逸れてしまいますが、育児休業中は健康保険料、厚生年金保険料が免除されます。免除とは保険料を納付しなくても納付したとみなすということで将来受給する老齢厚生年金も保険料を納付していたものとして計算されます。この点でも子育てする人を支えるという国の方針がわかりますね。

スキルアップにも雇用保険が使える

冒頭でちらっとありましたが、能力向上にも雇用保険が使えるというのは意外でした。その点についても教えてください。

最後に、多くの方が利用できる「教育訓練給付制度」についてお伝えします。
雇用保険の目的の1つである労働者の能力向上を支援する制度です。
情報処理技術者資格、簿記検定など、働く人の職業能力アップを支援する講座など厚生労働大臣が指定した教育訓練を受けた場合に、その受講にかかった費用の一部が雇用保険から支給されます。一定の受給要件を満たしていれば在職者、離職者のどちらでも利用することができます。

教育訓練給付金の支給申請は、受講修了後、原則として本人がハローワークに出向いて手続きを行います。

スキルアップのために、資格取得を目指す方もいらっしゃると思います。こういった制度を利用することもできますので、どんなスキルが対象になるのか調べてみてもいいかもしれませんね。

はい、せっかくサポート制度があっても知らなければ利用できないわけですから・・・。今回も知っておくことの大切さがわかりました。

5回にわたり給与明細を読み解いてきました。給与明細からは多くの情報を得ることができます。公的な制度も視野にいれて、ご自身の周りのお金について見直してみてはいかがでしょうか。



※本コラムではわかりやすさを重視して一般的な情報をお伝えしていますので、個別のケースや詳細については、厚生労働省のホームページ、日本年金機構のホームページなどでご確認ください。

※当社では勧誘行為に該当するようなFP的業務は行なっておりません。

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