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為替ヘッジって何をするんですか? 【教えて!福室先生 #5】

債券運用に長い間関わってきた債券のプロでありレオスの債券戦略部長である福室に、債券はなんとなく知ってはいるけど実際に運用はしたことがないレオス社員友利が、債券投資についての疑問点をぶつけていきます。今回のコラムは、債券の仕組みなど基本的なことは理解しつつも債券ファンドのことはあまり身近でないという方の理解を深めてまいります。

<プロフィール>
福室 光生(ふくむろ みつお)
1995年、欧州系証券会社で金融キャリアをスタート。その後、JPモルガン証券、UBS証券にて債券トレーディングに従事。2020年、レオス・キャピタルワークス入社。同年、債券戦略部長に就任。国債トレーディングの経験が長く、現物からデリバティブまで債券運用に精通している。

<プロフィール>
友利 駿介(ともり しゅんすけ)
2016年に国内大手資産運用会社に入社し、2019年からレオス・キャピタルワークスへ転職。現在は営業本部付。「投資と上手に付き合う方法」好評連載中です!

「教えて!福室先生」第5回です!前回は債券投資における為替の影響についてお伺いしました。今回は、福室先生に為替ヘッジとは何をするのかについて質問をしていきたいと思います!

為替ヘッジはどのようにするの?

友利:
具体的に、為替ヘッジをするためには何をするのでしょうか?

福室:
細かい実務については多少省略してご説明しますが、冒頭で申し上げたとおり、一般的には為替予約と呼ばれる取引を用います。

為替予約取引とは、将来のある時点で、あらかじめ定められたレートで通貨を交換することを予約する取引です。

交換するタイミングは1か月先や、3カ月先といくつかパターンがあり、場合によって使い分けることになりますね。

友利:
「将来のある時点で、あらかじめ定められたレートで通貨を交換することを予約する」と、なぜ為替リスクがヘッジできるのでしょうか?

福室:
例えばドルで取引されるドル建ての米国の債券を100万ドル分購入することを考えてみます。

このときの為替レートを1ドル100円とします。債券を購入する分のドルをまず用意しないといけないので、
①1億円(100万ドル×100円)の日本円を、A銀行を通じて100万ドルと交換します。
②その100万ドルでB証券から米国の債券を購入します。



為替ヘッジをする場合、米国の債券の購入と同時に、C銀行と為替予約を行ないます。
具体的には、
③「1か月後、C銀行はファンドに1億円支払い、ファンドはC銀行に100万ドルを支払う」という約束をするとします。


ちなみに、将来の交換レートをフォワードレートと言って、現在のレートであるスポットレートとフォワードレートは必ずしも一致しないのですが、ここでは為替ヘッジの効果を分かりやすくするために、フォワードレートもスポットレートと同じく1ドル100円で考えています。

友利:
為替予約取引だけを見ると、私たち(ファンド)は日本円を受け取り、米ドルを支払う立場ですから、日本円から見たときの米ドルの価値が低ければ、日本円ベースでの支払う金額も小さいので、日本円の価値が米ドルよりも高くなる円高の方がうれしいということになりますね。

福室:
はい。購入したドル建ての米国の債券を日本円で評価することを考えると、日本円の価値が米ドルに対して低くなる、つまり円安になるとよいことになります。
前回説明したことのおさらいですが、1ドル80円の円高になったときの損益と1ドル110円の円安になったときの損益は次の図のとおりです。



しかし、この為替予約では、日本円の価値が米ドルに対して高くなる、つまり円高になれば為替で利益が出るということになります。
次の図では、先ほどと同じく円高のパターン、円安のパターンでの損益を表しています。受け取る金額は日本円なので為替相場の影響はありませんが、支払う金額は米ドルのため、為替相場の影響で、日本円で見たときの支払金額は増減します。

友利:
今のご説明だと、米ドル建ての米国の債券を購入して保有する場合、円高になったら損だけど、円安になったら利益が出る。一方で、米ドルを支払って、日本円を受け取る為替予約取引をすると、円高になったら逆に利益が出て、円安になったら損が出てしまうということですか。

福室:
そうですね。債券の損益と為替予約の損益をまとめると次の表のとおりになります。

※評価損益は日本円ベースです。
※米国債券の米ドル建ての価格変動はないものとみなしています。

友利:
表を見ると、為替相場による損益がうまく打ち消しあって、円高になった場合でも、円安になった場合でも合計の損益がゼロになっていますね。

福室:
為替相場の変動によるリスクを小さく抑えるという為替ヘッジの狙いどおりになっていると思います。

用語MEMO

・為替予約取引   将来のある時点で、あらかじめ定められたレートで通貨を交換することを予約する取引のこと。

・スポットレート  為替取引においては、現時点での異なる通貨間の交換レートのこと。

・フォワードレート 為替取引においては、将来の時点での異なる通貨間の交換レートのこと。

為替ヘッジの目的は?

友利:
為替ヘッジの仕組みはおおむねご説明いただいたのですが、福室先生が運用しているひふみグローバル債券マザーファンドは、外貨建ての債券は原則として為替ヘッジを行なうファンドですよね。原則為替ヘッジとした狙いは何になるのでしょうか?

福室:
「リスクオフの円高」という言葉があるのですが、市場全体でリスクを回避しようという動きが強まる状況をリスクオフと呼びます。このとき、為替相場は円高になる傾向があります。リスクオフのときは、リスクが高い資産からリスクが低い資産に資金が移動するので、株式からは資金が流出して、株価は下がることになります。

友利:
円高ということは日本円に対して外貨の価値が下がるということなので、リスクオフのときは外貨建ての資産の日本円での評価金額は下がる傾向になりますね。そして、同時に株価も下がる傾向にあるのですね。

福室:
そうです。債券は比較的値動きの小さい資産ですから、為替ヘッジをせずに外貨建ての債券に投資をしていたら、債券価格よりも為替相場の影響の方が大きくなる場合もあります。

ひふみグローバル債券マザーファンドは、ひふみらいとやまるごとひふみ15、まるごとひふみ50といった、株式と債券両方に投資をするバランスファンドに組み入れられています。特にリスクオフのとき、株式の下落と一緒に外貨建ての債券も日本円ベースで下落すると、バランスファンドの基準価額の下落幅も大きくなり、結果的にバランスファンドのリスクは大きくなるのです。

そのため、バランスファンド全体のリスクを考えて、ひふみグローバル債券マザーファンドでは原則為替ヘッジを行なうということになりました。

友利:
なるほど。まさにバランスを考えているわけですね。福室先生、今回もありがとうございました。

用語MEMO

・リスクオフ  投資家がリスクを回避する傾向が強まり、市場全体でリスクの高い資産からリスクの低い資産に資金が向かいやすくなる相場状況のこと。対義語はリスクオン。

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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