世の中の話題にフォーカス みんなの経済マップ Vol.2「テーパリング」前編 金融政策とは
みなさんこんにちは。経済調査室の橋本です。こちらの連載「みんなの経済マップ」では、はじめて経済の話題に触れる初級者の方から、もう一歩踏み込んで知りたい中級者の方へむけて、いま注目のテーマについてお伝えします。第2回は、今年マーケット関係者がとても注目しているテーマ「テーパリング」です。アメリカ市場で実際に起こっている事象についてご説明する前に、まず前編(初級編)では、金融政策について理解を進めましょう。
<プロフィール>
橋本 裕一(はしもと ゆういち)
地方銀行を経て、2018年レオス入社。パートナー営業部にて国内外の金融機関、機関投資家への投信および投資顧問営業に従事。
2020年より経済調査室にて、経済や株式市場の調査を行なう。
今回のポイント
- 景気の体温調整機能 金融政策とは
- 全世界が注目 米国の金融政策
景気の体温調整機能 金融政策とは
いきなり「テーパリング」と言われても、私たち生活者にとっては馴染みがない言葉かもしれません。しかしながら、実は今年、金融マーケットでよく耳にする単語が「テーパリング」なのです。
テーパリングとは金融政策に関する用語なのですが、まずは金融政策について理解を進めてまいりましょう。
国の規模で行なわれる経済政策には大きく、財政政策と金融政策の2つがあります。
その違いや特徴を下記の表に記しています。特に実施主体が政府と中央銀行で異なる点は注意してください。
昨年、コロナ禍で給付された10万円の特別定額給付金がありました。これは政府による財政政策です。
その他にも「GoTo事業」などが財政政策にあたります。
つまり、財政政策には政府が行なう景気対策などが含まれます。
実際、私たちの生活に身近な政策も多く、比較的イメージしやすいのではないでしょうか。
一方、金融政策は、中央銀行(国の中核となる銀行。日本では日本銀行)が実施する経済政策です。金利や世の中に出回るマネー量を調節します。
皆さんもニュースで「利上げ」や「国債買入れ」などと耳にしているかもしれません。その実施主体こそ、中央銀行です。
では中央銀行は、何を目的に金利やマネー量の調節を行なっているのでしょうか。
結論としては、景気のブレを抑えるためです。
景気が過熱しているときには冷やすような政策を行ない(=金融引き締め。利上げ・マネー量を減らすこと)、景気が冷え込んでいるときは底上げするような政策を行ないます(=金融緩和。利下げ・マネー量を増やすこと)。
金融政策は、いわば景気の体温調整機能です。
景気を底上げするときに、金利を下げる理由としては、次のような波及効果があるからです。
金利が下がれば、住宅ローンや自動車ローンの金利が下がります。そのためローンを組みやすくなり、家計は住宅や自動車などの購入を増やそうとします。
住宅や自動車の販売が増えれば、メーカーは生産設備や雇用を増加させようとし、賃金も上昇するでしょう。雇用が増えて賃金も上昇すれば、さらに消費が活発になります。
金融政策は、景気が冷え込んでいる時にはこのような波及経路で景気を底上げする機能を担います。
全世界が注目 米国の金融政策
世界の金利やマネーに最も影響を与えるのが、米国の金融政策です。
中央銀行は、日本では日本銀行ですが、米国では連邦準備制度(通称Fed:フェッド)というのがこれに相当します。
Fedは「世界の中央銀行」とも呼ばれ、米国経済のみならず、世界経済全体に大きな影響を及ぼします。なぜなら米国は世界最大の経済大国であり、また米ドルが世界の基軸通貨であるからです。
Fedでは理事会(FRB)が中心となり、理事会の監督下、全米12の地区ごとに連邦準備銀行が置かれています。
そして、理事会の理事(議長・副議長を含む定員7名)と、地区連銀から5名の総裁が投票権を持って(残り7名は投票権のないオブザーバーとして)参加し、開かれるのがFOMC(連邦公開市場委員会)です。
FOMCは年に8回開催され、ここで金融政策の基本方針が決定されます。
株や債券の価格は、金利の影響を受けて変動するため、FOMCの動向は世界中のマーケット関係者が常に注目しています。
今回は、金融政策について解説してきました。
後編(中級編)ではいよいよ「テーパリング」とは何か、実際にアメリカ市場で起こっていることに触れながらマーケットにどんな影響があるのかについて解説していきます。
※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。
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