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世の中の話題にフォーカス みんなの経済マップ Vol.3「選挙と株価」

みなさんこんにちは。経済調査室の橋本です。こちらの連載「みんなの経済マップ」では、はじめて経済の話題に触れる初級者の方から、もう一歩踏み込んで知りたい中級者の方へむけて、いま注目のテーマについてお伝えします。第3回となる今回のテーマは「選挙と株価」です。10月21日の衆議院議員の任期満了に伴い注目される選挙の動向。株式市場とはどのような関連があるのか解説いたします。

<プロフィール>
地方銀行を経て、2018年レオス入社。パートナー営業部にて国内外の金融機関、機関投資家への投信および投資顧問営業に従事。
2020年より経済調査室にて、経済や株式市場の調査を行なう。

 

今回のポイント

  • 一番人気は「支持政党なし」。自民の対抗馬不在で波乱は起きない公算大。
  • マーケットでは基本的に「選挙は買い」
  • 鍵を握るのは「海外投資家」

一番人気は「支持政党なし」

東京五輪・パラ五輪が閉幕後、世の中の次の注目は秋の政局へと向かうでしょう。
というのも、衆議院議員の任期が10月21日に迫っているからです。
コロナ禍で生活が激変したことにより、否が応でも政治への関心が高まる一方で感染力の強いインド型(デルタ型)の流行で、世界の景況感も頭打ちとなっており、この先の景気に対する不透明感も強くなっています。こうした不透明感や政局不安は、今年、日本株が欧米株に劣後している一因とも言われています。

まずは現在の状況を過去のデータを用いてみていきましょう。

衆議院の総選挙には2つのパターンがあります。
①任期満了による総選挙:任期日の前30日以内に行なう
②解散による総選挙:解散日から40日以内に行なう

実は①のパターンで総選挙を行なったのは、戦後1回しかありません(1976年12月)。
このとき第1党であった自民党は、結党以来、初めて衆議院の過半数を割り込む敗北を喫しました。

通常、内閣は選挙に有利なタイミングを見計らって解散を決定します。
好機を逸した任期満了による解散で後手に回る状況は、現与党も避けたいでしょう。

衆議院本会議の議事は、特別な場合を除き、出席議員の過半数の賛成で決められます。そのため与党はひとまず過半数を目指すことになります。
現在の議席数を見ると276議席なので、72議席減らしても過半数を確保できる計算です。


昨年9月、74%(日経世論調査)という高い支持率で始動した菅内閣ですが、足下では34%(7月)まで低下しています。
衆院選の前哨戦と目された7月の都議選では、自民党は思うように票を伸ばせませんでした。
ここには特に菅政権のコロナ対策への低評価が要因としてあるようです。またメディア各社の調査では8月の内閣支持率が7月より低下しているものも多く、今回の衆院選の不透明感は高まっています。

しかしながら、政党支持率を確認すると、最も多いのは「支持政党なし」で半数に迫る割合です。
そして続く自民党が30%超で他政党を圧倒しています。現在の日本では野党が大変弱く、自民党は好まないが他に選択肢が無い、もしくは投票に行かないというのが現状です。


都議選は案外な結果でしたが、衆院選は政権選択の選挙です。
今の状況で自民党が議席数を減らす可能性も見ておく必要がありますが、選挙巧者の自民党が過半数を割るほど負けるというのは考えにくいでしょう。

過去、首相交代や政権交代になった直前のデータを見ると、支持率は20%台前半あたり、不支持率は70%前後となっています。
菅政権が危険水域に達するには、まだ10%ポイント程度の支持率低下と不支持率上昇の余地があります。

マーケットでは基本的に「選挙は買い」

過去の衆院選を振り返ると、解散日から相場の上昇が始まるケースが多く見られます。
解散に伴い選挙日程が決まると買いの動きが出てくる傾向です。

過去5回の衆院選で、解散日から約3ヶ月後(ここでは60営業日)の日経平均株価の推移を見ると、いずれも上昇しています。これは政権や首相が交代した回を問わずに当てはまります。

投資家のスタンスとして、基本的には「選挙は買い」といえるでしょう。


選挙前後は新政権や新たな政策への期待が高まりやすく、また選挙に勝ったということは国民から信任を得た証でもあるため、マーケットがポジティブに反応するのも頷けます。
選挙の結果如何もそうですが、選挙というイベントを通過し不透明感が解消されること自体もマイナス面が減る材料です。

ただし、短期的に株価は上昇しても、かつて、第1次安倍政権→福田政権→麻生政権→鳩山政権→菅(かん)政権→野田政権と毎年首相が交代した時代は中長期で株価は低迷しました。
実は、こうした政権の安定性を注視しているのが海外投資家です。

鍵を握るのは「海外投資家」

海外投資家の動向は日本株に大きな影響を持ちます。
昨年のデータでは、東証1部の売買代金の7割超を海外投資家が占めています。

株価同様に、衆院選時の海外投資家の売買動向を確認すると、こちらもやはり解散日を含む週からは買い越しの傾向が出ています。


ただし今年は不透明感が強いため、解散日付近からではなく、実際に選挙結果が決まった後に勢いづく可能性もありそうです。

海外投資家は政治リスクに敏感です。彼らが好むのは、政権が変わらずに安定していることや、社会課題の構造的な改革路線をとることなどです。
自民党が無難に議席数を確保すれば、海外投資家もポジティブに評価するでしょう。
本来は中長期でのデジタルやグリーンを含む各種改革を掲げ、それを国民および投資家に評価されるのがベストです。ただ今年の場合、まずはコロナ対策が目下の課題となるため、構造改革のウェイトは相対的に小さくなりそうです。

その他、仮に政権が揺らぐ結果になったとしても、投資家がどれだけ菅政権にベットしていたかは疑問が残りますので、これが剥落しても市場への影響は限定的だと考えます。

今回はいかがでしたか?
いずれにせよ、政治だけで日本株へ資金が流入するというほど単純なものではないですが、衆院選を無難に通過し、日本株が買いやすい状況になることは株価好転のきっかけになるでしょう。
その後「誰が首相をやっても結局日本は変わらなかった…」と中長期で再び株価が低迷しないことを期待したいです。


※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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