ひふみアニュアルミーティング2021 EVENT REPORT ③ 後編
2021年12月12日(日)、ひふみシリーズの年間運用報告会「ひふみアニュアルミーティング2021」を開催いたしました。今年もオンラインでの開催となりましたが、「いろどりゆたかに」をテーマに多彩なゲストとのトークセッション、ひふみの運用メンバーによるセミナーパートなど内容盛りだくさんのイベントの様子を、レオスメンバーがレポートいたします!今回は、作家・研究者の佐藤優さんをお招きし、当社・代表取締役会長兼社長の藤野、経済調査室長の三宅、総合企画本部の白水とのトークセッションの様子を、マーケティング部の田村が2回に分けてレポートいたします。
このトークセッションでは、藤野がどうしてもゲストとしてお招きしたかったという、外交の専門家である佐藤優氏をお招きしました。インテリジェンスと投資という、異なる分野ながらも密接に関わりのある分野の専門家の方々がそれぞれの視点から、“これから”の世界を語ります。
佐藤さんが見る『ヤンキーの虎』の面白さとは?
佐藤さんは、藤野の著書のひとつである『ヤンキーの虎』(東洋経済新報社)を高く評価してくださっているそうです。佐藤さんはこの本の中に、藤野だからこその視点を見たと言います。
白水:
佐藤さんは藤野さんのことを「本当に面白い人だよね」と仰っていましたが、どういったところが面白いと思われますか?
佐藤さん:
例えば、著書『ヤンキーの虎』の面白さですね。『ヤンキーの虎』のすごいところはエピソード主義=ただの経験談になっていないところです。
例えば、いわゆるヤンキー、マイルドヤンキーの人たちがパン屋をたくさん作っていて、70代以上の人たちはパンが好きな人が多いということ。ここまではほかの人でも書けるかもしれません。
でも、藤野さんはその先を考え、お米の糖度に注目している。今はお米の糖度が高くなったから若い人は朝にお米を食べているけれど、70代の人たちが若い頃はお米の糖度が低かった。その人たちにとってパンは富裕層の食べ物でモダンなものという意識がある。だからそこにビジネスチャンスがある、というように普遍化しています。
ほかにも、小泉改革で土建業が弱くなったから介護ビジネスに人が流れていったというよう話もそうです。普遍的なロジックを展開しているから面白いし、投資環境を理解するのにも役立つのではないでしょうか。
「お金っておっかねえ」という言葉にこめられた意味とは?
佐藤さん:
お金ってすごく大切なものです。
そのお金を預けるということは人間の根源的な信頼につながっていて、お金を預ける、投資するっていうのは単なるビジネスを超えるところがあって、人間としての信頼とプロフェッショナルとしての能力どちらも必要ですよね。
藤野:
若い頃、先輩に「お金っておっかねえんだ」と言われたことがあります。
当初はからかわれたと思ったけど、30代になってあの時の言葉は冗談めかして大事なことを言ったなと思うようになりました。それから腹を据えてこの仕事に取り組んでいます。
お金そのものはプレーンなものだけど、お金を触ることでその人の人生が壊れることがあるし、お金を持っていることでほかの人の怒りや嫉妬を集めることもある。
お金は未来を切り開くものだけれど取り扱い危険物でもあるということだと思います。
佐藤さん:
お金は取り扱い危険物だから、危険物の取り扱いに通じている人が扱った方が良いということですよね。
藤野:
お金の様々な側面を理解しているということや、この人が信用に値するということをどうやって多くの人に思っていただくかが大事だと考えています。
佐藤さん:
藤野さんたちは本物のお金の重さが分かっているのだと思います。
前に脱税の専門家の検察官に言われた話ですが、銀行員の巨額の脱税事件が起こるときは、お金がただの数字に見えてしまうようになってリアルなお金の重さが分からなくなったときだそうです。
藤野:
お金には“身体性”があって、これを感じられるかどうかが大事だと思っています。
佐藤さん:
皆さん、自分だけ投資家として数字を増やしていこうと思ったら別の選択肢もあるわけじゃないですか。
藤野:
確かにその方が楽ですね。
佐藤さん:
ひふみにはお金持ちから毎月少しずつ投資をしていこうという人まで色々な人が信頼してお金を預けていて、具体的な人たちに貢献しています。
自分たちが利益を出しつつ投資家に利益を還元していくというのは資本主義社会における社会保障の一番の在り方だと思っていて、僕はそこに共鳴しています。
藤野:
運用者に対するよくある批判のひとつに、本当に運用が上手いなら人のお金なんて運用せずに自分で自分のお金を運用して成功しているはずだというロジックがあります。
でも、その批判には見えていない世界があって、損得だけで捉えていると思うんです。私たちにとって何が楽しいか、素晴らしいか、やりたいかというと、人のお金を増やすことやその過程で社会をよくするという部分がある方がもっと楽しくてやりがいがあるよね、と思っています。
佐藤さん:
ロシアでお金持ちになった人は、大抵ヨーロッパの色々なところに家を買って、プライベートジェットを買ったりするけど皆だいたい2年もすると飽きます。それで次はどこかに良いチャリティがないか考えるようになってくる。
若い人のなかには投資で儲けて早期リタイアしたいという人もいて、そういう人と話をすることがあるけど、あなたが思っているよりお金はもっと必要だと思うよということと、きっと退屈だと思うよということを話しています。
藤野:
私もFIREしたいという人にはFIREしろと言っています。FIREするほどお金に知識があって、巨万の富を得たなら絶対にFIREしたくなくなる、やってみて成功したらあなたは変わるから目指しなさいと言っている。そうじゃない人はFIREできないと思います。
サングラスをかけ替えて色々な世界を見よう
ほかの人とは全く異なる世界が見えているようにも思える佐藤さんと藤野はどのようにして物事を見ているのでしょうか?セッションの最後に聞いています。
白水:
最後に佐藤さんから一言お願いします。
佐藤さん:
藤野さんは非常に面白い人だと思います。
僕が尊敬しているのは、ボトムアップの考え方をしているところです。
藤野さんがやっているビジネスも、主婦や年金生活者、学生、フリーターなど投資とは距離が遠いと思われている人たちに投資の門を開くという歴史的な仕事をしていると思います。今日は運用チームの人とも話をしましたけれど、とってもいいチームだと思いました。
白水:
佐藤さんと話していると、佐藤さんがかけていらっしゃる眼鏡って違う世界が見えているのかなと思いました。
佐藤さん:
こういうサングラスをかけているとこういう世界が見えるけれど、違うのをかけるとまた違う世界が見えるということだと思います。藤野さんは色々なサングラスをもっていて、サングラスをかけ替えることで見える像をふまえて投資していらっしゃるのではないでしょうか。
白水:
皆さんにも色んなサングラスで世界を見てほしいですよね。
佐藤さん:
単純なところでは好き嫌い関係なく論調の違う新聞を複数読むとか。そういうのがサングラスのかけ替えのはじまりですよね。
藤野:
最後にサングラスの話をしていただきましたけれど、私もいろんな眼鏡で見ようと意識はしています。
Twitterでランダムに一35,000人くらいフォローしていて、たまに10分くらいタイムラインをざーっとみます。フォローしている人のうち1万人くらいは知人だったりお会いしたことがある方ですが、その他は本当にいろんな人がいる。北海道の奥地で働いている共働きの公務員の方とか、山梨で結婚して嫁いだけどご主人に先立たれてシングルマザーとして子供を育てながら家事をしている方とか、そうやって住んでいる場所も、家族構成も、生活様式も全然違う人たちが何を言っているのかということを見ています。
佐藤さん:
まさにボトムアップですね。
藤野:
視点が違うと見え方が違うのでその立場の人が世の中の出来事をどう見ているのかということを見ています。自分に近い人や自分のインテリジェンスに近い人だけを見ていると、それが世の中だと思ってしまいがちだけど、見えている世界は一部でしかない。そういうのを見る仕組みがないと、本当の意味で世界が見えなくなってしまいます。
非常に内容が濃く、あっという間に時間が過ぎてしまうトークセッションでした。私としてはセッションを通して、佐藤さんと藤野がお互いにリスペクトしあっていることが伝わってきたことが印象に残りました。それぞれプロとして、分野は違えども根っこで大切にしていることには共通点も多く、互いに共鳴する部分も多かったのかもしれません。
また、個人的にはマーケティング部のメンバーとして、より多くの方に“楽しさ”や“わくわく”といった投資の魅力をお伝えするためにはどのようにしたら良いかを考えるうえで、「今、自分はどんなサングラスをかけて世界を見ているのだろう」と意識するきっかけにもなりました。同じように、このトークセッションをご覧いただいて、普段の生活やお仕事に役立つ気づきを得ていただけたとしたらとても嬉しく思います。
※当記事のコメント等は、掲載時点での当社の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。