もっと知る・もっと学ぶ ひふみラボ

タグで記事を検索

ひふみアニュアルミーティング2021 EVENT REPORT ④ ひふみスタジアム 前編

2021年12月12日(日)にひふみシリーズの年間運用報告会「ひふみアニュアルミーティング2021」を開催いたしました。内容盛りだくさんのイベントの様子を、レオスメンバーがレポートいたします。今回は運用メンバーによる「成長企業の見つけ方 in ひふみスタジアム」のパートです。日々世界中の企業を調査するファンドマネージャー、アナリストがどのような視点で成長企業を見つけているのかひふみの運用メンバーそれぞれがお話しいたしました。

2021年9月に新卒で入社し、12月から債券戦略部に配属になりました、本間がひふみアニュアルミーティング2021年午前中の目玉企画である「成長企業の見つけ方 in ひふみスタジアム」をレポートいたします。前編はまず、株式戦略部シニア・ファンドマネージャーの韋、アナリスト・多田、シニア・アナリスト大城のパートをお伝えいたします。

レオスでは、ひふみをはじめ、国や企業の年金資金を運用しています。代表取締役会長兼社長の藤野、代表取締役副社長の湯浅、運用本部長の渡邉が、それら全体を取り仕切るファンドマネージャーの役目を担っています。
ファンドマネージャーはいわば「チームの監督」のような立場でもあるので、このパートを「ひふみスタジアム」と題して、藤野・湯浅・渡邉はスタジアムジャンパーとキャップをまとって登場です。
ちなみに、3人がかぶっている「ひ」「ふ」「み」の帽子はレオスの社内部活「手芸部」のメンバーが仕上げたものです。

「選手」であるアナリストたちは、くじ引きで打順(?)を決め、ウグイス嬢による紹介アナウンスで登場しました。

1番 韋(ウェイ) 長期的成長3つの条件

韋は、「短中期で成長する企業と長期的な成長する企業を発掘するには見ている視点が違う」というお話をしました。

韋:
短中期で成長する企業を見つけるポイントは「友達との雑談を楽しむ」、「寄らば大樹の陰」の2つのポイントがあります。

特にファッションやゲームなど、ジャンルを問わずトレンドに敏感な友達との「最近どんな映画を観たの?」、「最近どんなアプリで遊んでいるの?」などの会話から、ウォールストリートのアナリストよりも早く成長企業を見つけることができます。

なぜなら、アナリストは成長企業を見つけてからレポートを書くため、情報にタイムラグが生まれてしまいます。しかし、自分自身が日常の会話からヒントを得ることで、レポートが出る前に情報をキャッチし、株価が上がる前に買うことができれば大きなリターンを得る可能性があります。
2つ目の「寄らば大樹の陰」とは「大きくて強いもののそばにいると小さなものも安泰」という意味のことわざですが、すでに大きく成長していて誰もが知っている企業ではなく、その企業のサプライヤーやサービスの一部を提供している企業に投資することで、すでに成長している企業と一緒に成長する可能性があります。

一方、10年、20年、30年と持ち続けたいと思えるような長期的に成長する企業を見つける視点は異なります。
そのような企業には3つの特徴があります。

1つは、「大きな潜在市場があること」。魚に例えると、小さな池(市場)では泳ぎ回る範囲や餌の量(チャンス)に限界がありますが、海のような広い場所では自由に泳ぎ回ることができ、餌も豊富で尽きません。同様に、企業にとっても大きな市場を見込めることが長期的に成長していくポイントの一つです。
2つ目は、「ビジョン・領域の拡大・継続的な挑戦」です。例えば、Amazonは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」というビジョンのもと、既にオンラインでのCD・書籍の販売で成功していましたが、これにとらわれず販売する品を広げていきました。また、AWS(Amazon Web Services)という社内で使用していたクラウドコンピューティングサービスの顧客への提供など、継続的に挑戦し成長を続けています。
3つ目は「希少性」です。長期的に成長する企業には、ビジネスモデルや経営者や人材、ブランド、技術力などなんらかの希少性があります。
これらの特徴を備えていると長期的成長を遂げる可能性が高いといえます。

短期的な目線では、流れに乗ることにフォーカスし、金融市場のトレンドは実社会のトレンドの後からついてくるという観点から、実社会で流行している点に着目する一方、長期的目線では、流行ではなく持続的な成長を主眼に置いているという点がとても興味深かったです。短期と長期で視点を変えた分析手法を用いることによって、片方では見えてこないような収益機会を探っていきたいと思いました。

2番多田 偶然(セレンディピティ)を科学する

多田は、「論理性だけでは得ることができない偶然の企業との出会い」=「セレンディピティ」についてお話ししました。

多田:
私の場合、まず成長企業を「論理性」の観点から見つけます。しかし、そこで直面するのが「認知エラー」です。
認知エラーとは、不完全な情報、分析能力によって生じる非合理的な意思決定です。言い換えると様々な内的、外的バイアスによって生じる判断ミスであり、論理性の限界で、私自身様々な認知エラーに直面しました。

例えば、「これだけ入念に調査したのだから間違えることはないだろう」と思い込んでしまう保守性バイアス・コントロールの錯覚、「この間、深堀した〇〇のテーマは今後盛り上がるに違いない」と思い込む利用性ヒューリスティック、良いと思った企業について良かったところばかり目が行ってしまう確証バイアス、初期に見つけた企業が一番良いと思ってしますアンカリング効果などがあります。

大事なことはこのような認知エラーを否定するのではなく認め、論理性の限界を補う調査アプローチをすることです。

そこで重要になるのがセレンディピティです。
このセレンディピティを必然にするために私がしているのは、まず多くの打席に立つということです。レオスでは年々取材件数が増えており、企業との偶然の出会いが増えていると感じています。
そして重要なのは、一度論理的に絞り込んだアイデアを拡張するということです。論理的な前提を疑うことで、最初に調査をした企業の取引先や、バリューチェーン上にある他の企業、グローバルの競合他社などに調査対象を広げていくのです。

調査した企業先が「もう重要ではない」と判断し売却した事業にあえて注目し、その売却先企業に話を聞きに行ったところ、「この事業やこちらの企業も面白いな」と感じたことがあります。

運用本部の朝会で、私たちアナリストは自分が調査した銘柄をメンバーに紹介します。これまで私が得たアイデアの半分が論理性、もう半分が論理性で得たアイデアを拡張したことによる「セレンディピティ」で得られたアイデアです。ロジックと同じくらい、セレンディピティが大切だと感じています。

論理的分析によって絞り込んだ後にあえて異なる観点から対象を広げることによって、分析の初期では見えてこなかったような企業や事業を発見し儲けるチャンスを見つけられることもあるというのは面白いと思いました。私も、論理性の限界を認識して、「論理的であるから正しい」と思い込まずに柔軟考えることでより良いリターンを追求していきたいです。

3番 大城 今日から使えるアナリスト思考

大城のパートは

  • 日常生活から発見
  • 株価に訊く
  • 業績に訊く

という3点について話しました。

私が注目したのは2つ目の「株価に訊く」です。

大城:
株式へは世界中の投資家が投資しています。世界の投資家は非常に頭がよく、早耳で、行動が速いので、良い銘柄はすでに株価が上がっていることが多いです。
本当は株価が一番下がった時に拾いたいところですが、それができる人は限られています。株価が上がっている銘柄あるいは業種ではそれなりの理由があるはずです。
例えば、1か月、3か月、半年、1年のリターンで業種や銘柄をスクリーニングしてみると必然的に環境がいい銘柄が浮き上がってきます。その中で上昇している理由をひとつずつ見ていきます。
株価が上がっている理由が単純に短期的な反応だと思えばその銘柄は調査の対象から外します。逆に織り込みが甘く、現状維持バイアスが強いためまだまだ上がっていく余地があれと思えばその企業と話したり、レオスの仲間と話すことによって投資まで結びつけることがあります。

過去を振り返り株価が上がっている理由を分析することにより現在の株価水準が適切かどうかを見極める点は、他のメンバーとは少し異なった視点だと思いました。「マーケットは常に正しい」ということを忘れずに、過去マーケットで起きた事象を振り返ることで、自分の分析手法を常にアップデートしていきたいです。



「ひふみスタジアム」はまだまだ続きます。後半は次回レポートいたします!

※当記事のコメント等は、掲載時点での当社の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。