もっと知る・もっと学ぶ ひふみラボ

タグで記事を検索

世の中の話題にフォーカス みんなの経済マップ Vol.12「まもなく米中間選挙 好転の秋となるか?~米国株の季節性」

こちらの連載「みんなの経済マップ」では、はじめて経済の話題に触れる初級者の方から、もう一歩踏み込んで知りたい中級者の方へむけて、いま注目のテーマについてお伝えします。第12回のテーマは「まもなく米中間選挙 好転の秋となるか?~米国株の季節性」です。

マーケットの「季節性」とは、必ずしも理屈で説明できるわけではないが、経験則としてよく起こることを表します。
どうやら秋は米国株にとって良い季節という経験則があるようです。
そこで今回は、米国株にはどのような季節性があるのか、その背景としてどのようなことが考えられるのか、また、11月8日に控えた米国の中間選挙はどう関連するのかを紹介していきます。

<プロフィール>
橋本 裕一(はしもと ゆういち)
地方銀行を経て、2018年レオス入社。パートナー営業部にて国内外の金融機関、機関投資家への投信および投資顧問営業に従事。
2020年より経済調査室にて、経済や株式市場の調査を行なう。


今回のポイント

  • 米国株の季節性~8・9月は低調、10・11月は好調
  • 中間選挙の前は低調、後は好調

米国株の季節性~8・9月は低調、10・11月は好調

結論は図表を確認するのが早いでしょう。
過去10年および30年の平均値・中央値から判断すると、相対的に8・9月は株価が低迷しやすい一方、10・11月は株価が好調になりやすい様子が見てとれます。


8・9月に株価が低迷しやすい理由としては、主に下記が考えられます。
投資家が夏のバカンスに入り、相場が閑散とする。長期休暇の前にできるだけ保有株を減らす行動を行なう。
(あるいは、7月の株価がやや強く見えるが、長期休暇の前に優良株に買いを入れるケースも考えられる。こうしてサマーラリーが起き、その反動として8・9月が低迷する可能性もある)
過去の株価暴落イベントが9月や10月に多かったため、警戒感が高まりやすい。
(例…世界恐慌:1929年9月、ブラックマンデー:1987年10月、リーマン・ショック:2008年9月など)

一方、10・11月に株価が好調になりやすい理由としては、主に下記が考えられます。
年末のホリデーシーズン(11月下旬の感謝祭からクリスマス、ニューイヤーにかけての期間)にあたって小売売上などが伸び、また小売やレストランなどの雇用も増えて所得が増加する。
・ 2年に1度、米国の選挙(11月の大統領選挙および中間選挙)の結果を受けて、不透明感が解消されたり、新たな政策への期待が高まったりする。
・ 米国の投資信託やヘッジファンドなどは10月や11月に決算が多いとされ、好パフォーマンスを得ようと保有銘柄を買い増すインセンティブが働く。ただし年間成績が悪い場合は換金売りも出やすい。

なお、4月も平均値で見ると良好になっています。4月には米国の確定申告期限があり、税還付金が支払われるため、株高になるといわれます。
また、相場格言としても有名な5月の「セル・イン・メイ」(Sell in May and go away:5月に売り逃げろ)は、税還付金が市場へ流れ込む構図が5月中に終了するため、株安になるといわれます。

中間選挙の前は低調、後は好調

2022年11月8日、米国では中間選挙が実施されます。中間選挙とは、4年ごとの大統領選挙の中間(2年経過時点)で行なわれる連邦議会選挙です。
前段で、秋以降の好パフォーマンスには、米国の選挙が寄与する部分があるとお伝えしました。
過去5回および10回の中間選挙の前後で株価の動きを確認してみましょう。


中間選挙前まで、その年の株価は低調になる傾向があります。
実は過去多くの中間選挙で、大統領政党は議席を減らしています。特に政権1期目の中間選挙は、現政権への信任投票という位置づけになります。大統領就任から2年近く経過すると現政権に対して国民の不満が募っていることも多く、議席を減らしやすいとされます。
こうした政治への不透明感から、選挙前までの株価は低調になりやすいことが推察されます。今年も足もとまで株価は弱い動きをしており、ある意味では「これまで通り」ともいえるでしょう。

一方で、選挙を通過すると、政治的不確実性が解消され、明確に上昇する傾向が見てとれます。
特に年明け以降も上昇が続き、春頃まで力強い株価の動きとなっています。
本レポートでは8・9月や10・11月を特筆しましたが、解説によっては10月~4月頃にかけて株価が強く、5月~9月頃にかけて株価が弱いとするものもあります。

今年の先行きに関していえば、確かに投資家にとっては中間選挙以上に、マクロ要因(インフレ、金融引き締め、景気後退リスク、地政学リスク)の方が重要な位置づけにあるかもしれません。
しかし、過去のデータを見れば秋から春にかけて米国株のパフォーマンスは上向くことが多く、そうした季節性を頭の片隅に置いておくことも大切だと考えます。


※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

同じタグの記事を検索
#みんなの経済マップ