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藤野英人×佐々木靖人対談【ひふみアニュアルミーティング2022レポート】

2022年12月4日(日)にひふみの年次運用報告会「ひふみアニュアルミーティング(HAM)2022」を開催いたしました。今回は、代表取締役会長兼社長 最高投資責任者の藤野英人と、株式戦略部のシニア・ファンドマネージャー佐々木靖人の対談の内容をレポートします。対談では4月からの8か月間を振り返りながら、二人の出会いやこれから先のひふみについてお話しています。レポートを担当するのは営業部のラヒミアン・ベーラドです。

大分県別府市出身です。2022年4月にレオスに新卒で入社し、営業部に配属されました。国内外の機関投資家営業を中心に、先輩に同行し営業とは何たるかを学んでいる日々です。
この対談は他のセミナーやメディアでは語られなかったエピソードがてんこ盛りの内容でした。
様々なエピソードを通じて、ひふみの歴史を共に紡いだ2人の関係性が垣間見える、貴重なセッションとなりました。

会場にはひふみ投信・ひふみプラスファンドマネージャー佐々木、ひふみワールド・ひふみワールド+ファンドマネージャー湯浅、ひふみグローバル債券マザーファンド ファンドマネージャー福室とともに、企業調査をするアナリストたちが集まり、お客様の質問に対して適切なメンバーが回答する形式でした。

二人の出会い

佐々木:
これまでもいろんな場面で話してきましたが、二人の出会いはTwitterなんです。
2009年のリーマンショック直後に、突然藤野さんがDMをくださったんですよね(笑)

藤野:
今だとTwitterは身近なものですが、当時はオタクがやっている遊びみたいなもので、オタク同士がマーケットだったりベンチャーだったりを気兼ねなく本音で語り合うような、割と狭いコミュニティの中で情報交換する場だったんですね。
その中で、佐々木さんのツイートを見ていて、1/3ぐらいひねくれたツイートで、1/3ぐらい愚痴で、1/3ぐらい非常にポジティブでかつ鋭いツイートがあったというのが当時の記憶でした。
今でもいろんな人のFacebookやTwitterなどを、自分が発信する以上に見ているんですが、当時その中でベンチマークしている一人が佐々木さんだったんですね。佐々木さんが「運用会社いきてぇ!」とつぶやいたのを見逃さなくて、直接コンタクトを取って「興味があるならうちに来ないか」って話をしたら、「行きたくなくはないんですけど…」とつれない返事が来たので最初は来たくないのかなと思っていましたね。

佐々木:
でも考えてみてくださいよ、2009年のSNSですよ(笑)そこで人に会うってなかなか勇気のいる時代で、全く知らない人から、「うち、中小型株に投資する会社なんだけど、興味ない?」って言われても、めちゃくちゃ興味あるけど、投資詐欺なんじゃないかと思ってしまって(笑)それで言葉を濁した返事になったんですよね。
そうしたら、「何月何日にここに来てくれませんか?」とトントン拍子で話が進むので、名前を調べてみたらひふみ投信っていう投資信託を始めた人なんだと知って、ダメ元で一回会ってみるかと思って行ってみたんですよね。
当日に面談でもするのかと思ったら、「今から三越の物産展に行くぞ」と急に言われて、他のレオスメンバー数名と一緒に回ったのを覚えています(笑)
その2週間後に連絡が来て、他のメンバーと食事を一緒にしながら意見交換をして、その後レオスに入ることになりました。今振り返ってみても、すごく望外な出会いだったなと思います(笑)

藤野:
当時、佐々木さんのTwitterのアカウント名が「sskyst(ささきやすと)」さんだったんですけど、私はTwitterにちなんで「ささやきすと(囁きスト)」と読み間違えていたんですよね(笑)これはいい洒落を言う人が来てくれたなと。
2009年にレオスの株を一株一円で売り、給料も1/20になったので、僕自身もド貧乏だったんですが、彼に提示した給料はもっとひどかった。それなのによく来てくれたよね(笑)
当時のひふみ投信の運用残高が4億円しかなかったのですが、彼はその時から一緒に運用にコミットしてくれたんです。ポッと現れてポッと譲ったのではなく、途中1年半ほど他社に行っていたとはいえ、4億円から7000億円になるまでの過程を共にしているので、2022年の4月にファンドマネージャーの座を譲ったのは「ひふみ投信の準ファウンダー」だったことが大きいよね。

佐々木:
運用残高が4億円だったころの記憶が刻み込まれているんですよね(笑)自分の給料について愚痴ったら藤野さんの給料を教えてもらって、それはもう凹みましたし、めちゃくちゃ頑張ろうと思いましたね。今となってはいい思い出です。

8か月の振り返り

佐々木:
これは痛いテーマになりますが、皆様にご迷惑をおかけして申し訳ないという気持ちが強いです。
運用者は常に、これから良くなるという思いと悪くなるという思いのせめぎ合いですが、おそらく僕の悪かった点として、少しだけ守りの意識の方が強くなってしまった局面がありました。年初の下落を受けて、夏ぐらいに一旦マーケットに合わせようとしたことは運用報告でも申し上げましたが、合わせた後にどう攻めるかというアイディアの在庫を貯めていかなければいけない時に、世の中の混乱を受けて、すがる先がない状況になっていました。

運用メンバーとも議論を重ね、旧来のポートフォリオに戻すか、守りに入るかで悩んだ末に、守りに回ってしまったと藤野さんに話しました。それが結果的に裏目に出てしまったというのがこの8か月の振り返りです。
とはいえ、自分の中では光が見えている部分もあります。個別のケースで投資が当たっている事例は多く、リスクの取り方についてはより積極的に藤野さんに相談しておけばよかったなと反省しています。

藤野:僕からはほとんど何も言わなかったよね。一言も言わなかったかもしれない。

佐々木:
「こういう気持ちでやれよ」とか、「ああするな」とは言われなかったけれど、「それをするならこれをやった方がいいよ」と付加情報としてのアドバイスなどはもらっていました。例えば、今でこそ中小型株を増やしていこうと思っていますが、それに先んじて「中小型株に対してネガティブになりすぎるなよ」というアドバイスはもらっていて、それは今の運用のヘソになっています。

藤野:ファンドマネージャーって業界的にパワハラ体質な人が多いんですよ。ノートの取り方もこれじゃなきゃダメだ、取材はこうしろ、こう考えろ、服やパンツの色まで全部俺のようになれ、と言うようなジャイアンタイプの人がすごく多い。
僕はそれが大っ嫌いなんですよね。根本的には、自分のカラーに染めたくないというのがあります。というのは、染めてしまうと自分の劣化コピーになってしまうので、自ずと自分を超えられなくなってしまうからです。
いかに佐々木さんらしくなるかということが重要で、自分の色に1ミリも染めたくないと思っていました。
ただ、ひふみ投信は7000億円のファンドなんですよね。各所で「ひふみ投信はファンドサイズが大きくなりすぎた」とよく指摘されるんですが、事実として本当に大きいんですよ。1億5000万からスタートして、4億円の時に佐々木さんがジョインしてくれて、他のメンバーとともに大きくしていったわけです。もはや巨額ファンドであることは間違いないんです。
そもそも、日本に3000億円以上のファンドは数本しかないんですよね。このレベルで運用ができる人は社外を含めても3,、4人しかいないわけです。
巨額ファンドの運用については細かいことを言わないようにしていましたが、これは職人気質だからではなく、自分の思考パターンをコピーさせたくなかったという意図が大きかったです。
けれど次のチャレンジは、「こういうときはこうやって運用して、こういう部分を見るんだ」のような細かな部分も含めて、運用への関与度を上げることです。

調子の良い時・悪い時

藤野:ずっと調子は悪かったね。

佐々木:8月の下げ相場の時にブレーキを踏めていたので少々安心していた部分もあるんですけど、調子に乗らないようにしていました。
藤野さんもよく言いますが、「運用」は「運」を「用いる」と書きます、運用成績がよい時は私たちの力ではなく、むしろ信じて投資してくださったお客様のおかげだと思うようにしていました。一方で悪い時は全て自分のせいだと思うのがちょうどいいのだと考えています。 実際に自分もそう思っているんですけど、追い込まれていくとどうしても次第にメンタルがネガティブになり愚痴が薄々と出て、外に原因を求めたくなってしまったので反省しています。
逆に聞いてみたいんですが、藤野さんが調子の良い時も悪い時も永久機関みたいに仕事していますが、どういうメンタルでいるんですか?

藤野:僕はたぶん何かが壊れているところがあって、それが良かったと思うんですよね。
眠れないことが無いんですよ。

佐々木:あ、それは僕もそうだな。

藤野:それはファンドマネージャーに向いているかもしれない。
僕も失敗したな、残念だなと思うことはもちろんゼロではないんだけれども、気持ちをリセットできる力があることは自分の強さだと思っています。寝ると決めたら本当に15秒ぐらいで眠れるんですよね。だからこそ、いろんなストレスに耐えることが出来たんだと思います。
もう一つの考え方として、僕は本当は着ぐるみを着ていると思っているんですよ。皆さんに見えているのは着ぐるみで、背中のチャックを開けると中にイケメンの細マッチョがいるんです。お風呂に入るときに着ぐるみをビューッと吊るして、「おまえ苦労してるな、僕関係ないもん」みたいな(笑)要するに、いかに自分のことを他人事のようにするかっていうのは大事なんですよね。

作りたい未来

佐々木:昨今のインフレに対するメディアのスタンスを見ると、せっかく値上げができる国になりつつあるのに、値上げが悪いみたいな論調ですよね。それを聞いていて「違う違う、値上げするからあなたの給料に跳ね返ってくるんや!」って思いがあるんですけど、そういう声は一般の方々にはなかなか届きません。その中でも値上げに踏み切る会社さんのように、私たちはやらなければいけないことをやっている人を評価し、応援したいと思っています。
加えて、目の前の課題に対してタックルしていこうと、挑戦的な姿勢を見せる会社さんが出てきたときに、その気持ちに寄り添うことはとてもこの社会で大切なことだと思っています。運用成績も大切ですが、これからの世の中を考えた時にそういう人たちとの関係もすごく大切です。
目立たないけど地道に頑張っている会社さんって実はいっぱいあるんです。その人たちに僕らの一票を投じることが、ひいてはひふみのリターンにもなりますし、社会のためにもなるという思いがあります。

藤野:最近私も意図的に10代~30代前半ぐらいの人としか付き合わないようにしています。どうしてかというと、若い人たちは明るいんですよ。
実はその「失われたなんとか」っていうのを作った人たちっていうのはその世代を担っていた人たちなんですよ。「失われた20年、30年」じゃないんです。「失った20年30年」なんです。失ったのは僕たちなんですよ。50代~70代の人たちみんなで失ったんです。
でも今の若い人たちはいろんな意味でポジティブなんですよ。起業家と会う機会も多いのですが、皆さんすごく前向きで明るくて、そして未来志向なんです。投資家としてはやっぱりそっちにかけていくべきです。おじさんも頑張っているけれど、やっぱり若い世代の人たちの明るさや未来志向ってすごく大事だと思っていて、そういう人たちと未来を作っていく投資を再構築していくというようなことをしていけば、たぶんひふみが戻ってくるんじゃないかなと思います。だから、「ロスジェネ世代」という被害者意識を捨てて、みんなで未来を作っていくという方向にいくべきだと思うんですよね。
ここから巻き直していけば、ひふみの輝きは絶対に取り戻せると信じています。

佐々木:運用って楽しくもあり、本当にしんどくて厳しいです。ひふみ投信、ひふみプラスを引き継ぐときに、藤野さんに「スパルタだよ」って言われたんですよね(笑)
今自分の子どもが小さいのですが、子どもに見せる姿勢としては肩を落として仕事に行きたくないし、楽しくやっている姿を見せたいって思っているんです。それはお客様に対してもそうです。「大変だけどこういう楽しいことありますよ」と伝えたいです。時間はかかるけど、そのうちリターンになれば皆さんも幸せになれるって思って信じてやっている部分だけは変わっていません。次の30年本当に僕らで何かを得た世代になっていきたいし、自分たちの子供や若い世代の人たちにもどんどん投資してもらいたいなと思っています。
2022年はとてもご心配をおかけしたという気持ちは強く心に刻んでおります。またここから奮い立って頑張りますので、ぜひ今後も引き続きご支援いただければと思っております。今後とも引き続きよろしくお願いいたします。

拍手や笑いが絶えず会場には一体感すら感じられるほど、当日お越しくださったお客様から大変好意的な反応をいただきました。今までひふみの理念を信じてファンでいてくださったお客様の思いを肌で感じ、レオスの一社員として身の引き締まる思いです。この巨艦ファンドに託された思いを肝に銘じて精進したいと、強く思いました。

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。