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アメリカに負けていない!日本の巻き返しは始まっている【今が日本の転換点?インフレで変わる日本株!】#2

2023年は、日本株にとって転換の年だといえるかもしれません。
日経平均株価※はバブル崩壊後高値を更新、ニュースではインフレや大手企業の賃金上昇が話題になるなど、どうやらこれまでとは様子が異なるようです。
日本株にいったい何が起きているのか?この流れは今だけのものなのか?

この連載では、レオスのエコノミストやファンドマネージャーが日本株の今と未来への考察を語ります。「日本株のことが気になるけど、よくわからない」「いまから買っても間に合うの?」といった疑問について、一緒に考えていきましょう!

担当:経済調査室・マーケットエコノミスト 橋本
聴き手:レオス営業部兼ひふみ営業部 三田村

「米国株でよくない?」いや、日本も負けていない

ここ数年の投資ブームで注目度が高いのは『米国株投資信託』かと思います。実際、お客様からも米国株への投資の方がいいんじゃないですか?と聞かれることもあります……

そうですね(笑)『とりあえず株だったら米国株を買っておけばいいんじゃん。』と思う方も多いと思います。私も基本的にはその考え方に賛成です。
実際、過去10数年間の株価の伸びを見てみますと、米国株の方が日本株よりも大きく伸びています。

潜在的な成長率も米国の方が高いと思いますので、米国株に投資をしておくというのは、一般投資家としては基本的なスタンスだと思います。
一方で、これは2010年からの日米の企業利益の伸びです。

このグラフは、世界中のアナリストが調査した結果をまとめた利益の予想の伸びです。実は利益の予想の伸びは、日米であまり差がありません。
株価は比較的大きく米国に差をつけられていましたが、利益の伸びに関してはむしろ、少し日本の方が大きいぐらいです。

株価は、

株価=EPS(1株あたり純利益)×PER(株価収益率)

という式で表すことができるとセミナーでもよくお伝えしています。簡単にいうと、「企業の業績」と「期待値」を掛け合わせたものが株価です。
これまでの日本株が米国株に劣後していたのは、特にPERの方の差、つまりマーケットからの期待値に差があったことが大きな要因です。

ニュースなどで決算のたびに「日本の上場企業は過去最高益」と目にするのに日本株はまだバブルの高値を超えていませんよね?
不思議に思いますよね。それはどうしてなのかというと、まさに日本はマーケットからの期待値が低かったんです。


2010年代から2020年の初頭はスマホの世の中で、評価されたのはITに関連する業界でした。メガテックといえば米国の企業ですので、この10年は米国の方がマーケットからの期待値が高かったということになります。

この灰色の線は、米国のS&P500で、黄色が日経平均株価です。

この青い線は、S&P495(米国のS&P500から、GAFAMといった大手のハイテク企業を除いた時価総額)の推移を過去10年で見たものです。

2013年を起点に考えると、直近の日本株のパフォーマンスが良いこともあり日経平均株価とS&P500は大体同じくらいのパフォーマンスになっています。さらに、大手のハイテク企業を除けば、むしろ米国株よりも日本株の方がパフォーマンスとしては良いという実態があります。
巨大なIT企業があるというのが米国の強みではありますが、それ以外の分野・業界であれば日本株も負けない魅力があるのではないかと思います。

また、日本株が優位になるか米国株が優位になるかは、金利にも関係しています。
過去十数年、基本的には金利が下がってきましたが、ところどころ金利が上がる局面では、日本株の方が米国株に対して優位に動くことがありました。今後どんどん金利が上がっていく局面ではないかもしれませんが、米国の金利が高止まり、あるいは日本の金利も上がってくると、米国株に対して日本株が優位になる可能性は十分あると思います。

日本人としては、自分の国のことや自国の企業については馴染みもありますし、頑張ってほしいです。分散投資のためだけではなく、成長するから日本株や日本株投信も持つ、という風に変わってくるかもしれませんね!

海外投資家は気が付いた 「日本いいね。」

今年の日本株上昇の背景で起きているインフレや米国との比較をみてきました。ところで、いま日本株を買っているのは主にどんな人達なんですか?

現在の日本株の変化に気付き、どんどん買っているのは海外の投資家です。
結局株というのは最終的に誰かが買ってくれないと上がりません。今年、日本株を買ってくれたのは海外の投資家なんです。

この図は日本株の売買動向を表したものです。

アベノミクスの1年目である2013年に日本株を15兆円買い越したのが、海外投資家でした。その後2015年以降、海外投資家の傾向としてほとんど日本株を売り越していましたが、今年は10年ぶりに大きな水準で買い越しています。

証券会社の方と話しても、これまで知らなかった海外のお客さんからの注文や、『日本株の話を聞かせてくれないか』という問い合わせがあるそうです。レオスにも海外の投資家からの問い合わせがふえています。
実際に海外の証券会社や運用会社で、日本株のアナリストを増員したり、中国株担当から日本株の担当に配置換えをするという話もきいています。

海外投資家が日本株を買っているということですが、他にはどんな人が買っていますか?
こちらが日本株の買い手の内訳です。先ほどからお伝えしているように、海外の投資家が一番買い越しています。

実は、「買い手の質」が今の日本株の底堅さを物語っていると思います。

まず、売り越している投資家を見てみましょう。
一番日本株を売っているのは、信託銀行です。信託銀行が運用している資金は、私たちの年金です。
年金を運用している機関は、日本株に投資をするウエイト(割合)が決まっています。例えば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の場合、日本株はポートフォリオ全体の25%目安と決まっているので、今年のように日本株がどんどん上がっていく局面では、日本株のウエイトを25%に戻すために、機械的に売らないといけません。
なので、日本株がネガティブだと思って売っているわけではなく、あくまでポートフォリオの調整のために機械的に売っています。

それから個人投資家です。個人投資家の投資行動は、基本的に「逆バリ」。
相場が上がると売却し、下がると買います。
つまり、株価が上昇している局面で一時的に相場が下がったとき、「押し目買い」をしてくれるのが個人投資家です。

買い越しているのは海外投資家以外に、事業法人がいます。これは一言で言えば、企業による自社株買いです。「自社株買い」とは、企業が自己資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいいます。

このように、相場が下がった時に個人投資家が押し目買いをしてくれたり、近年は企業の自社株買いが進んでいることもあり、日本株の底堅さに繋がっています。

春先の日本株の上昇は、『とりあえず知っている大企業の日本株を買おう』という動きが多かったかもしれませんが、これからは買われる銘柄が選別され、規模が小さい会社でも成長性を見極めたうえで優位と判断された場合には買われていくのではと思います。


次回からは、日本株変化のドライバー2つ目、「企業の意識改革」をテーマにお届けします!

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