アナリストは見た!東証改革で変わる日本企業の意識【大変革!日本企業が迎えるターニングポイント】#1
2023年は、日本株にとって転換の年だといえるかもしれません。
日経平均株価※はバブル崩壊後高値を更新、ニュースではインフレや大手企業の賃金上昇が話題になるなど、どうやらこれまでとは様子が異なるようです。
日本株にいったい何が起きているのか?この流れは今だけのものなのか?
この連載では、レオスのエコノミストやファンドマネージャーが日本株の今と未来への考察を語ります。「日本株のことが気になるけど、よくわからない」「いまから買っても間に合うの?」といった疑問について、一緒に考えていきましょう!
担当:株式戦略部 ファンドマネージャー 内藤
聴き手:レオス営業部兼ひふみ営業部 三田村
PBR(株価純資産倍率)1倍以上を目指す東証の改革
東証改革
2023年3月、東証はすべての上場企業、特に「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」の企業に対し、経営改善を要請。
企業価値向上や、株価への意識改革の必要性を指摘した。
東証は、ROE(自己資本利益率)が8%未満で、PBRが1倍を割っている企業は、2023年3月末時点でプライム市場に約半数、スタンダード市場に約6割あると言及していました。ROEというのは企業の収益性だといえますので、「収益性が低くて株価も評価されていない企業」が日本の株式市場の半分以上を占めている状態なのです。これでは魅力的な株式市場とはいえません。
この状況を変えるために東証が求めていることはシンプルで、日本の上場企業の株価を上げることです。
株価を上げるためには、PBRを上げることがひとつの方法です。
メカニズムを簡単な式にすると以下のようになります。
「PBR1倍割れ企業」は、ROEが低くて、資本コストが高い企業です。
PBRを上げるためには、 ROEを改善して資本コストを下げる必要があります。
ROEを上げるとPBRが上がり、PBRの分子である株価が上がります。そうすることで魅力的な市場になると東証は考えているんです。
実際データを見てみましょう。
横軸がROE、縦軸がPBRです。
ROEが上がれば上がるほど、PBRは上がっていく傾向にあります。
理論的にもデータで見ても、ROEを上げることが企業にとっては重要だと東証が示してるんですね。
実際の日本企業の状況を見てみると、年初来株価が上昇しています。
東証の提言により、多くの企業がROEの改善や資本コストを意識した経営に舵を切り始めています。中期経営計画や決算説明会資料などで、ROEをより意識した経営方針について発表する企業がふえました。
その中身としては、積極的な自社株買いや製品の値上げ、賃上げなどです。
まだまだ成長余地があると、企業それぞれが示し始めているのが今の日本株の全体の流れだと思います。日本株はますます注目されていくでしょう。
アナリストが実際に見た企業の姿
取材先企業のCEO、CFOはもちろん、経営戦略を担当する社員の方々からもアドバイスを求められます。私たちのような投資家の意見が経営に反映される環境が、かなり整いつつあるなと肌で感じています。
一方で私が懸念しているのが、東証がPBR1倍を改善せよと言ったことで、PBR1倍が一つのゴールになってしまうのではないかということです。
実際、PBRを1倍にすることが目的になってしまっている企業もとても多いと感じます。
これは何を意味するかというと、企業のPBRが1倍に近づくと、その後の成長を期待できず株価が下がる可能性があるということです。
そのため、私が今重要視しているのは、「PBRが1倍を超え、さらに拡大していける企業なのかどうか」です。そこを見極めるためにしっかり取材し、自分の足で稼いで成長できる企業を見つけてくるのが、今の私の仕事です。
東証の改革に関係なく、自分たちの経営課題をちゃんと見つめてPBR1倍以上稼ぐ企業を探しに行くことが、ひふみとしても、とても重要な課題だと思っています。
次回は、これからの日本市場で伸びる○○な企業についてお伝えします!
※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。
※日経平均株価に関する著作権、知的財産権その他一切の権利は株式会社日本経済新聞社に帰属します。