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世の中の話題にフォーカス みんなの経済マップ Vol.13「日経平均株価がバブル後最高値更新!日本株は新たなステージへ!」

こちらの連載「みんなの経済マップ」では、はじめて経済の話題に触れる初級者の方から、もう一歩踏み込んで知りたい中級者の方へむけて、いま注目のテーマについてお伝えします。第13回のテーマは「日経平均株価 がバブル後最高値更新!日本株は新たなステージへ!」です。
日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新し、連日話題となっています。いま日本株には様々な好材料がありますが、中でも最も大きな変化といえるのが「物価」を取り巻く変化です。
今回は、日本経済に起きつつある物価の地殻変動と株高について解説します。

<プロフィール>
橋本 裕一(はしもと ゆういち)
地方銀行を経て、2018年レオス入社。パートナー営業部にて国内外の金融機関、機関投資家への投信および投資顧問営業に従事。
2020年より経済調査室にて、経済や株式市場の調査を行なう。


今回のポイント

  • 日本株は新たなステージへ
  • 物価や賃金が上がる時期は、株価も上がる傾向
  • 物価を加味した日本の成長率が高まる

日本株は新たなステージへ

日本株は過去2年ほど、一定の高値と安値の範囲で値動きが続くレンジ相場でした。しかし今回はその天井を上抜け、3万円台を固める展開となり、新たなステージへ移行しています。


今回、株価が大きく上昇した要因を考えると、日本株には好材料が多くあることがわかります。


こうした諸材料とは別に、実は日本株や日本経済に大きな変化をもたらしつつあるものがあります。
それは、物価の地殻変動が起きつつある 、ということです。
具体的には、家計が購入するモノ・サービスなどの消費者物価や、私たちの賃金を取り巻く環境が数十年ぶりに変わりつつあるのです。

物価や賃金が上がる時期は、株価も上がる傾向

22年度の消費者物価(生鮮食品除く)は、前年度比+3.0%と、41年ぶりの伸びとなりました。

主な品目と上昇率


帝国データバンクの調査によると、飲食料品では22年に2万5,768品目が値上げされました。そして23年にも約2万5,106品目の値上げが見込まれているとのことです。
これまで値上げに慎重であった企業も、他社に追随して値上げをする動きが広がっています。


また賃金についても、23年の春闘における賃上げ率(「連合」による6月の集計データ)を見ると、全体で+3.66%、中小企業でも+3.36%と、30年ぶりの高水準となっています。

賃上げの例では、23年初頭にユニクロを運営するファーストリテイリングが、国内従業員の年収を数%~最大約40%引き上げることを表明しました。またイオングループはパート従業員約40万人の時給を平均7%引き上げることを表明するなど、大手企業が賃上げに踏み切るニュースが話題になりました。
賃金が上がれば、増えた所得を元に人々は消費を増やし、モノやサービスの需要が高まって、物価を押し上げるという循環に繋がります。


特に重要なのは、「物価は(今後も)上がるものだ」という認識が世の中に広がることです。

人々は将来の予想に基づいて行動しますから、物価が上がることを前提とした習慣に消費者や企業が変化することで、物価や賃金は高まりやすくなります。
例えば、消費者には今後物価が上がるならば先にモノを買っておこうという動機が働き、企業には今後さらなる人手不足が予想されるから賃金を上げて人材を確保しておこうという動機が働きます。消費者、企業ともに「物価は上がるもの」というマインドに変化することによって、実際のモノの需要や労働需要よりも強く物価や賃金に上昇圧力がかかります。

そして過去を振り返ると、物価や賃金が上がる時期は株価も上がる傾向にあるのです。
一見、物価が上がることは私たち生活者にとってネガティブに感じるかもしれませんが、株式市場ではポジティブに捉えられます。それはなぜなのでしょうか。

物価を加味した日本の成長率が高まる

インフレの世界が、基本的には株式投資にポジティブである背景には、物価を加味した日本(企業や経済)の成長率が高まることがあります。

一般に、企業の売上は単価×数量で決まります。
この単価が上がらなければ、企業は数量を伸ばすために、国内シェアを奪ったり、海外進出したりする必要があります。しかし、単価(物価)を上げることさえできれば、前年と同じだけしか売れなくても、売上の数字は伸びることになります。

値上げによる業績への影響や、値上げが連鎖する例として、牛丼チェーンの「松屋」は直近1年間で4回の値上げ(22年5月、22年10月、23年3月に2回)をしており、運営する松屋フーズの23年3月期決算では売上高+12.8%(前年比)となりました。「吉野家」も22年10月に値上げをしており、売上高+9.4%(前年比、23年2月期決算)、「すき家」も21年12月と23年2月に値上げをしており、運営するゼンショーHDは売上高+18.4%(前年比、23年3月期決算)となっています。

かつて2017年10月に居酒屋チェーンの「鳥貴族」が28年ぶりの値上げを行なった際には、消費者に受け入れられず、結果として客数が減少してしまいました。当時の失敗理由としては、他社が値上げに追随しなかったことなどが挙げられています。

その点、今回値上げの「広がり」というポイントでは、同業界でも多くの企業、多くの品目に広がっている面で、明らかに地殻変動が起きているといえるでしょう。

他にも、例えば23年5月に主な飲料メーカーが缶コーヒーを一斉に値上げしました。「ジョージア エメラルドマウンテン」「キリン ファイア」「ワンダ モーニングショット」といった耳馴染みのある商品です。こうしたショート缶の値上げは実に25年ぶりのことだそうです。こうしたこともまさに値上げが多くの企業、多くの品目に広がっている例です。

経済全体で見ても、物価上昇(下落)分も成長率の上昇(低下)分とみなした「名目GDP」は直近で年率換算572兆円と過去最高を更新しました。
そして名目GDPは株価との連動性が強く、今後も名目GDPが上昇しやすい環境が続くことで、それに伴い株価も上昇しやすくなることが期待されます。


22年度の消費者物価(生鮮食品除く)は+3.0%の上昇でしたが、私たちが買い物をする頻度の高い「食料」だけで見ると+5.7%の上昇です。こうした物価上昇が続くと、それ以上に収入や資産がふえない限り、どんどん手元のお金は減っていきます。インフレに負けないためにも、投資信託などでの資産運用は、いよいよ必須の心得となる段階にきているのかもしれません。


※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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