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水平分業からみる半導体の業界【ビジネスモデルの変化に着目!成長する市場の探し方】#1

2024年は年初から日本株に勢いがあり、これから投資をはじめたいと考えている人も多いのではないでしょうか。
日経平均株価※はバブル崩壊後高値を更新、ニュースではインフレや大手企業の賃金上昇が話題になるなど、どうやらこれまでの「デフレ経済」とは様子が異なるようです。
日本株にいったい何が起きているのか?この流れは今だけのものなのか?

この連載では、レオスのエコノミストやファンドマネージャーが日本株の今と未来への考察を語ります。「日本株のことが気になるけど、よくわからない」「いまから買っても間に合うの?」といった疑問について、一緒に考えていきましょう!

担当: 株式戦略部 ファンドマネージャー 大城
聴き手:レオス営業部兼ひふみ営業部 三田村

日経平均のゆくえ

2024年になって、日経平均株価が急速に伸びてきています。大城さんはこのことを、どのように見ていますか?

上場企業に取材していると、業績の実態を反映しているというより、東証改革への期待から株価が先行して上昇している企業が多い印象を受けます。「株価は2倍になったけど、会社としては特に何も変わっていない」という話も聞きます。
そうした意味では、今後企業が本当に変わっていけるかどうか、東証が目指す資本効率の良い企業になっていけるかどうかが問われてくるのではないでしょうか。そこで変化することができる企業が生き残っていくでしょうし、変化できない企業も出てくると思います。私は日本株の上昇については冷静に見ていて、伸びていく企業とそうでない企業の選別がこれからいっそう重要になると考えています。

「水平分業」からみる成長市場の探し方

私たち株式戦略部のメンバーはいろんな切り口で成長する企業を探していますが、今日はそのうち一つの考え方をご紹介します。それが「水平分業」から成長するマーケットを探す方法です。
水平分業って何ですか?
わかりやすく言うと、複数の企業がそれぞれ得意な部分を担当(分業)することで、一つのプロダクトをつくるビジネスモデルのことです。

「水平分業」は研究・開発・製造・販売などの工程を、異なる企業が得意分野を活かして協力するビジネスモデルのことです。その反対に、一つの企業がすべての工程を受け持つ「垂直統合」というビジネスモデルがあります。
それぞれメリット・デメリットがあり、どちらか一方が良いというわけではありません。

水平分業が進む半導体の分野

私たちの仕事も、水平分業になっていますよね。レオス・キャピタルワークスは投資信託を運用していますが、投資信託の販売を銀行や証券会社などのパートナー企業に委託しています。

そうですね、資産運用の業界も水平分業のモデルになっていますね。そのほかに、水平分業でよく知られているのが半導体の分野です。
1980年頃まで、半導体企業は垂直統合のビジネスモデルが主流でした。その後、パソコンやスマートフォン、自動車など多くの分野で需要が高まり、半導体はより複雑な設計・製造方法に進化しました。そうすると垂直統合で一企業が半導体をつくることが難しくなり、水平分業に移行してきたという経緯があります。

今では、設計に特化したファブレス、製造の前工程を担当するファウンドリ、製造の後工程を担当するOSAT(オーサット:Outsourced Semiconductor Assembly and Test)というプレイヤーたちへの分業が進んでいます。

半導体企業の例
※個別銘柄の推奨ではありません。

垂直統合:インテル
水平分業
 ファブレス:エヌビディア
 ファウンドリ:TSMC、サムスン電子
 OSAT:ASE

では、水平分業の視点から半導体マーケットや株価を見てみましょう。
半導体全体の市場も伸びていますが、注目したいのはファウンドリ市場も伸びていることです。
さらに株価を見てみると、グラフ一番上の突出して上昇しているのがファウンドリの企業になります。ファウンドリ企業は製造の技術に特化し、その技術を磨くことで顧客をふやし、儲けたお金でさらに設備投資をして存在感を高めています。一方で、あまり株価がふるわないのは垂直統合モデルの半導体企業です。株価を見ても、半導体分野の産業構造が垂直統合から水平分業モデルに変化していることがわかると思います。

海外の半導体企業が日本国内に工場をつくるというニュースが話題になりましたね。

半導体の分野は日本企業にも恩恵がありそうな分野ですので、水平分業の視点から業界を眺めてみる方法についてお伝えしました。産業構造の変化に着目して成長する企業を探すヒントになれば幸いです。

次回は、水平分業からみる製薬会社のケースについてお話します!


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※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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