もっと知る・もっと学ぶ ひふみラボ

タグで記事を検索

未来は"予測"するものではなく今ある技術から"発見"するもの【ひふみ目論見倶楽部 準備運動編#1 堀江貴文さん】

10 年後の未来を創造する「ひふみ目論見倶楽部」。2023年10月に行なわれた座談会では、堀江貴文氏をお招きし、藤野英人、株式戦略部・内藤誠と共に「未来」と「発見」をテーマに熱く語り合いました。あれから1年……。今、その内容を振り返ってみると、10年後の世界像がより鮮明に見えてきます。座談会の内容を一部抜粋して紹介後、藤野英人社長が、この1年を振り返ります。

>>>YouTube動画はこちら

ひふみ目論見倶楽部とは?
「ひふみ目論見倶楽部(愛称:ミーモ)」は、未来の選択肢を提示し創造することを目指して設立しました。「目論見倶楽部」という名前は、未来を企画して前進し世の中を動かしていくというニュアンスを「目論む」という言葉に込めて名付けました。 ひふみが提示する新しいアクティブファンドの在り方、そして「ひふみの魅力」を形づくる中核的な活動が、この「ミーモ」です。レオス・キャピタルワークスのメンバーや外部の専門家を中心とした学術的な活動を通して、10 年先を見据えてひふみの運用に落とし込むことや、より多くの人を巻き込んだコミュニティや勉強会として機能することを目指します。

堀江 貴文さん プロフィール
1972年10月29日、福岡県生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。現在はロケット開発や、アプリのプロデュース、また予防医療普及協会として予防医療を啓蒙するなど、様々な分野で活動。会員制オンラインサロン『堀江貴文イノベーション大学校(HIU)』では 700 名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開している。HP:http://salon.horiemon.com(その他詳細はhttps://zeroichi.media/)、X アカウント:@takapon_jp

現在の延長線上にある未来 AI 技術がもたらすものとは

内藤:
2023年7月に『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(徳間書店)を上梓されました。まずは、この本を書かれた意図についてお聞かせください。

堀江:
正直に言うと、そこに書いてあるのは未来予測ではなく、ほとんどが今のことです。「現在、こういう技術があります。こういう概念があります。それらが発展すれば、このような未来が訪れますよね」という必然的な流れを挙げているに過ぎません。例えば、1993年に中村修二氏が世界で初めて青色LEDを発明しました。それが発表された瞬間に、それまで青色LEDさえあれば実現可能だと考えられてきた潜在的な技術の具現化が先々まで約束されたわけです。つまり未来予測とは、まだ一部にしか認知されていないものを、いち早く発見することです。それによって、この先にどういうことが起きるのか、ある程度、導き出すことができるのです。

藤野:
未来を予測するというのは、雲をつかむような話ではなく、現在すでに世の中にある事実の中から組み立てられるというわけですね。

内藤:
そこでお聞きしたいのが、生成AIについてです。世間では、生成AIの出現により「働き方が変わる」「職が奪われる」などと騒がれていますが、人間とAIの関係は今後どのように変化していくのでしょうか。

堀江:
「人間AIは違う」と声高に言う人がいますが、果たしてそうでしょうか。人間もAIも大した差はないどころか、むしろAIはすでに人間を超えている面もあると思います。ChatGPTは身体拡張であり、大脳の代替品です。進化の過程でサルと人間の知能に大きな差が生まれたように、今後ChatGPTが人間と同等、あるいはそれ以上の知能を持つであろうことは、さほど不思議ではありません。そもそも人間の脳は、重さは全体重の2%ほどでありながら、その消費エネルギーは全体の20%を占める、燃費の悪い器官です。そのため、通常は省エネ運転をしています。つまり、脳は記憶を頼りに「こういうものが見えるはずだ」という仮説を立てていて、その仮説と実際に目から入ってきた情報の差分だけを処理しているのです。12 年ほど前、その仕組みに着目したのが、トロント大の研究チームです。ニューラルネットワークと呼ばれる人間の神経回路を模した数式をノイマン型コンピューターに実装し、ディープラーニングの手法を確立しました。そこからさらに前頭前野の働きを搭載したのがGoogleの「Transformer」です。学習量が飛躍的に増えたことで、AI は次第に人間のような振る舞いをするようになっていき、それが今のChatGPTのベースになっています。

これからのオフィスワークは PCからモバイル中心の時代へ

藤野:
人間の脳は省エネ運転が可能ですが、ChatGPTはそうはいきません。人間よりも消費エネルギーが大きいとなると、その差はどう埋めるべきなのでしょうか。

堀江:
ビジネスとして考えた場合、人間を使ったほうが低コストで済むということは大いにあり得ます。ただ、AI専用の省電力チップや、電力をあまり必要としないアルゴリズムがこれから開発されていくでしょうから、投資という面では、そうした動きにアンテナを張ることが大切でしょうね。IT関連でもう一つ注目したいのが、オフィスツールの“モバイルファースト化”です。いまだに事務仕事はPCが中心で、同じ作業をモバイルで行なうとなると、非常に不便ですよね。

藤野:
確かに「Microsoft 365」も「Slack」も、あくまでPCでの使用を前提としたもので、モバイルからは“のぞける”程度。利便性はあまり配慮されていないイメージがあります。

堀江:
それを打破するのがモバイルファーストの考え方です。例えば「Lark」というアプリでは、チャットを中心に、メール、カレンダー、ビデオ会議など多数のオフィス機能がスマホ一つで完結します。これは、もともと「ByteDance」(動画共有サービス「TikTok」を運営する中国企業)の社内ツールとして開発されたもので、現在では有名企業も導入を始めています。オフィスワークの中心がモバイルにシフトする時代が、すぐそこに来ているのです。しかし、そうした事実はあまり知られていません。

藤野:
知られていない事実、つまり情報を集め提供することこそが私たちの務めであり、その役割はますます重要になってきていると感じています。

先進技術を正しく理解し、 適切に評価する姿勢が大切

内藤:
堀江さんは10年ほど前から、ロケットの打ち上げなどの宇宙産業にも携わっていらっしゃいますね。

堀江:
宇宙分野では、昔のインターネットの比ではないくらいの勢いでパラダイムシフトが起こると考えています。「スターリンク」(米国の宇宙開発 企業「スペースX」が運用するインターネットサービス)の衛星はすでに5000 機以上飛んでいますし、将来的には、現在の3~4倍の数の宇宙ステーションが打ち上げられる予定です。それによって何が起きるのかというと、人工衛星同士や衛星と地上間で光通信を行なうため、情報がより大量に、速く、安全に送り合えるようになります。NASDAQと東証を結んでHFT(取引手順を組み込んだプログラムに従って高速・高頻度で売買を繰り返す取引)を行なう人などは、大枚をはたいてでもそちらを選ぶでしょうね。さらに、リアルタイム版Google Earthが実現できるので、そこに画像認識AIを組み合わせることで、地上にあるすべてのオブジェクトが監視・分析できるようになり、市場調査などの精度が飛躍的に上がることが予想されます。

藤野:
今でも宇宙からテスラの工場を監視し、出荷台数のデータをレバレッジ取引に使っています。今後はそうした技術を発展させた、より精緻なトラッキングが可能になるわけですね。

堀江:
それともう一つ、僕が期待しているのは光格子時計です。これは、レーザーでつくった格子状の容器の中に、絶対零度近くまで冷やしたストロンチウムを一つずつ入れることで原子が吸収する光の周波数を測定し、短時間で正確な時間を導くというものです。現在、秒の定義に使われているセシウム原子時計の誤差は3000万年に1秒以下ですが、光格子時計は300億年に1秒。これによって、GPSでミリ単位の測定が可能になるほか、わずかな地殻変動を察知することで地震予知も実現できると考えられています。

藤野:
これはまさに、相対性理論の世界ですね。

堀江:
僕が不思議に思うのは、世の中の多くの人は、陰謀論は信じるのに、先進技術には懐疑的であること。これからの経営者や投資家には、技術を正しく理解し、適切に評価する姿勢が求められるのではないでしょうか。

藤野:
堀江さんのお話からは、長期予測には、現在成長段階にあるコア技術を注意深く見ていくことが重要だということがよく分かりました。本日はありがとうございました。

***
1年前の対談を振返って
本収録は2023年10月に行なわれました。ひふみ目論見俱楽部がスタートして一年経った今、当時の対談を振り返りました。
「未来予測とは、一部にしか認知されていないものを、いち早く発見すること」という堀江さんの言葉に、新鮮な感動を覚えました。技術シーンに限らず、世界では今、新しいこと、想像もつかないようなことが次々と起こっています。常に最新の情報を収集し、投資家の皆さんと共有していくことがひふみ目論見倶楽部の務めであるとの思いを、改めて強くしました。(藤野)


※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

同じタグの記事を検索
#ひふみ目論見倶楽部