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トランプ関税の衝撃 世界ではいま何が起きているのか?個人投資家にできることとは

ドナルド・トランプ米大統領による相互関税の発表内容が市場関係者の予想を超え、「トランプ・ショック」といえるほどの世界的な株価の暴落が起きています。トランプ関税を主因としたマーケットの混乱、欧州・アジアの現状、今後の経済や政治に対する影響などをどう見ればよいのでしょうか。投資信託ひふみシリーズの運用メンバーがお伝えします。

※こちらの記事は2025年4月7日にYouTubeにて配信した緊急セミナーの抜粋記事です。
>>YouTube配信アーカイブはこちら

【解説者】
藤野 英人:代表取締役社長 シニア・ファンドマネージャー
湯浅 光裕:代表取締役副社長 CIO シニア・ファンドマネージャー
高橋 亮 :運用本部副本部長 兼 海外株式戦略部部長 シニア・ファンドマネージャー
三宅 一弘:経済調査室長

ポイント1.米国経済について
・関税率は、事前予想を大幅に超えた水準に
・米国家計の負担増による景気減速懸念
・減税や利下げなど、景気刺激策によっては株価底入れも…?

ポイント2.世界経済と「アメリカ一強時代」の変化
・欧州の財政拡張と軍事費拡大
・孤立化に向かう米政府に、世界の国々はどう向き合うか

ポイント3.ひふみ投信、ひふみワールドの運用状況
・バリュエーションが高い米国株を減らし、現金比率を高めた
・下げ相場に耐えられる銘柄の組み入れ

トランプ・ショック(相互関税発動)による世界同時株安

<状況>

・S&P500、NASDAQ総合指数、TOPIXなど主要国の株価指数が弱気相場の目安である高値比15%の下落率を突破

・原油などの国際商品市況も急落し、世界の景況感の下振れを暗示している

・主要国の10年国債利回りも急低下しており、リスク回避から安全資産の債券が買われているのがわかる




三宅:

世界同時株安の震源地(原因)は明確です。トランプ米大統領は、貿易赤字削減、国内に工場を誘致し製造業を再建すること、大規模減税の財源をつくることなどを目的に、関税率を2024年度の2.4%から概ね20%ポイント上昇させると発表しました。これは市場予想のほぼ倍で、第二次世界大戦前1930年代のブロック経済時代と同じくらい高水準の関税率です。



三宅:

これにより増加する6,000億ドルの関税収入は米国内で販売される商品価格に反映されますから、最終的にアメリカ消費者の負担が増すことになります。それが消費減、景気悪化に繋がるのではないか?ということで、株式市場が混乱する要因になっています。

そして世界的に輸出が減ったり鉱工業生産が縮小することが予想され、世界景気の下振れリスクが懸念されます。

トランプ政権 今後の展望

三宅:
消費減・景気悪化に対応するため、トランプ政権は大規模減税やインフラ投資、FRBによる金融政策(利下げ)を適切なタイミングで実施できるかどうかが鍵となるのではないでしょうか。株安を放置すれば、中間選挙にも影響が出るのではとみています。


世界経済と「アメリカ一強」時代の変化

高橋:
2025年3月に欧州出張に行き、機関投資家たちがかつてなく欧州の防衛関連株に注目していることを知りました。ロシアのウクライナ侵攻やトランプ政権の外交方針を踏まえると、欧州にとっても「自国の領土は(アメリカに頼らず)自分で守る」意識に変わってきたのではないでしょうか。そうなると防衛関連株に関するスタンスも変わってきます。

とくにドイツが大きな変化を遂げました。それをきっかけに欧州の国々も財政拡大を基盤に自力で経済を成長させることが可能になるのではと考えると、米国経済と米国株だけが勝ち続ける「米国一強」「米国例外主義」の世界観が変わる時が来たのかもしれません。



藤野:

今回のトランプ政権は、2017年に発足した第一次トランプ政権とは別物と考えた方がよいでしょう。2021年からの民主党政権下で裁判に負け続けたり、選挙期間の暗殺未遂で命の危険を感じたトランプ大統領の意識は大きく変わったのではないでしょうか。保身のため反トランプ陣営をつぶすことに躍起になり、三権分立を無視する政策をすすめるなど、非合理的でめちゃくちゃなことをやっているように見えます。

それはなぜかといえば、トランプ大統領の支持層であるMAGA(Make America Great Again―米国を再び偉大にする)を強く意識してのこと。自身の権力基盤を揺るぎないものにするためです。米国の強みである民主主義そのものさえ、否定するような動きをしています。

多極化する世界、日本

三宅:
日本では7月に参議院議員選挙をひかえていますが、与党の人気が落ちています。政界再編が起きる可能性もありますね。



藤野:

日本も多極化しているので、昔のように与党の支持基盤となるマス層がいない状況です。こうした、新時代に合わせた政権が誕生する可能性があるのは日本だけの話ではありません。どこの国も細かく階層化し、少数政党が乱立化しています。日本もさらに階層化が進み、欧州のような社会に近づいていくのかもしれません。

「みんなと同じ」「大多数と同じ」という考え方ができなくなる世の中では、自分にとって何がよいのか、どう生きるのかといったことを真剣に考えていかなければならない状況なのだと思います。

ひふみ投信、ひふみワールドの運用状況

湯浅:
ひふみワールドシリーズの運用チームでは、2025年に入ってトランプ政権の目指す方向性が株式市場にとってマイナスなのではと感じ、また米国株のバリュエーションも高くなっていたのでファンドでは徐々に米国株、とくに半導体関連銘柄を売却し現金比率を高めていきました。


湯浅:

このような状況で、値上げができる企業や受注が取れる企業は手堅いと考えています。米株を売却したのち、次の投資先として欧州株や新興国株は流動性などの観点からまだ弱いところもあります。そのため、いわゆるディフェンシブ銘柄や値上げができる企業に着目し、世界に目を向けて投資先を広げていきます。

藤野:
今回は典型的なパニック相場に近いと思いますが、ひふみ投信マザーファンドでも2月頃からある程度準備をしていました。現金比率を過去になく高め、2月末には米国株をかなり売却したので、暴落のショックを和らげることができました。結果論ではありますが、もっと現金比率を上げてもよかったと思っています。


下落相場で耐える「殿(しんがり)銘柄」

藤野:
ひふみ投信マザーファンドの上位銘柄について解説すると、ソニーグループとフジ・メディア・ホールディングスの株価があまり下がっていません。下げ相場をある程度予想して現金比率を上げていた状況ではありますが、フジ・メディア・ホールディングスは(関税の影響が比較的軽微な業態であることから)「殿(しんがり)銘柄」といえます。殿(しんがり)というのは、戦(いくさ)で退却するときに軍隊の最後尾で敵と戦いながら味方を逃がす役割を果たします。下げ相場の中で、ファンド全体を支える存在となる銘柄を、殿(しんがり)のようだと思っているんです。

2020年2月にコロナショックで世界の株式市場が暴落したときも、殿(しんがり)銘柄に助けられました。その時はビデオ会議プラットフォームを提供するzoomとか、宅配ピザサービスのドミノ・ピザといった米国企業でした。


個人投資家の方に向けてのメッセージ

湯浅:
個人の方がこうした情勢を見ながらキャッシュ比率を上げたり、機動的な投資を行なったりするのは難しい面があります。私たちプロ投資家にある程度任せていただき、コツコツつみたて投資を続けてほしいと思います。

藤野:
今はインデックスで投資をするのが上手くいかない局面にあります。変化率の高いマーケットでは、最も効果があるのはつみたて投資です。下げ相場でも投資し続けることで、株価が反発するタイミングも捉えることができます。つみたて投資を駆使しながら、投資先を選んでいくことを考えてみてください。



※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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