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債券の金利って何ですか?(後編) 【教えて!福室先生 #3】

債券運用に長い間関わってきた債券のプロでありレオスの債券戦略部長である福室に、債券はなんとなく知ってはいるけど実際に運用はしたことがないレオス社員友利が、債券投資についての疑問点をぶつけていきます。今回のコラムは、債券の仕組みなど基本的なことは理解しつつも債券ファンドのことはあまり身近でないという方の理解を深めてまいります。

<プロフィール>
福室 光生(ふくむろ みつお)
1995年、欧州系証券会社で金融キャリアをスタート。その後、JPモルガン証券、UBS証券にて債券トレーディングに従事。2020年、レオス・キャピタルワークス入社。同年、債券戦略部長に就任。国債トレーディングの経験が長く、現物からデリバティブまで債券運用に精通している。

<プロフィール>
友利 駿介(ともり しゅんすけ)
2016年に国内大手資産運用会社に入社し、2019年からレオス・キャピタルワークスへ転職。現在はダイレクト営業部、パートナー営業部、未来事業室を兼務。「投資と上手に付き合う方法」好評連載中です!

「教えて!福室先生」第3回です!福室先生に色々と質問をして、債券の難しいところ、分かりにくいところをなるべくわかりやすく皆様にお伝えできたらと思います!今回は、前回に引き続き債券の金利について聞いていきます。

物価、景気、金融政策と金利の関係とは?

友利:
前回は金利とは何かということや、変動要因について聞いていきました。今回は、金利と深い関係にある物価や景気、金融政策について聞いていきたいと思います。まずは物価ですね。

福室:
インフレやインフレ率という言葉はニュースでもよく耳にするかと思うのですが、インフレはインフレーションの略で、物価の上昇のことです。
そして、インフレ率はインフレの度合いです。インフレ率が10%なら、1年で物価が10%上昇したということだと思ってください。

友利:
ニュースを見たり新聞を読んだり、経済に興味を持っている方だとなじみのある言葉かもしれないですね。

福室:
金利の変動要因は色々あるのですが、ほかの要因を無視した場合、インフレ率が高くなると、金利は上昇します
一方、インフレ率が低くなったり、マイナスになったりすると、金利は低下します

友利:
分かりやすいですね。次は景気との関係ですね。

福室:
景気の指標はいくつも種類があるのですが、一番有名なのはGDP成長率ですかね。
GDPは「国内総生産」のことで、その国の経済規模を表す指標です。
GDP成長率は経済成長率とも呼ばれ、その国の景気がよく経済規模が大きくなっているときは高くなりますし、反対に景気が悪いときは低くなったり、マイナスになったりします。

これもインフレ率と同じで、GDP成長率が高い、つまり景気がよいときは金利が高くなる一方、GDP成長率が低くて景気の悪いときは、金利も低くなります

友利:
インフレ率もGDP成長率も、高いときは金利も高く、低いときは金利も低いということですね。これも分かりやすいですね。次の金融政策はどうでしょう。

福室:
これは、現在の債券市場ではすごく大きなファクターになっていますね。
金融政策とは、中央銀行が様々な手法で金融市場に働きかけることです。中央銀行は経済状況を見て、経済活動を促進したりまたは抑制したりする働きかけを行ないます。前者を金融緩和と言って、基本的に金利は低下します。後者は金融引き締めと言われ、こちらは金利は上昇します。

友利:
なるほど。中央銀行の政策で金利が変動するということですね。

福室:
そうですね。金融政策が金利を引き下げる方向なら金融緩和、金利を引き上げる方向なら金融引き締めと呼ばれます。あと、ちょっと専門的なのですが、「ハト派」、「タカ派」という言葉もあるんですよ。

友利:
ハト派、タカ派って政治の世界でも言いますよね。イメージどおり、ハト派は穏健派、タカ派は強硬派という意味ですね。

福室:
金融の世界でもイメージどおりで、ハト派は金融緩和的な政策姿勢、タカ派は金融引き締め的な政策姿勢を指します。中央銀行の政策は、複数のメンバーの会議で決められることが多いので、メンバーの中でハト派、タカ派どちらが優勢かというのも重要になります。また、メンバーの発言も、その人がハト派なのかタカ派なのかを見極めるポイントになるので、市場参加者は注目していますね。

友利:
金融政策については、当社の経済調査室の橋本さんが分かりやすい解説記事を書いてますね。詳しく知りたい方はこちらもぜひお読みいただければと思います。

用語MEMO

・インフレ   インフレーションの略で、物価が上昇すること。反対はデフレ(デフレーションの略。)

・インフレ率  物価が前の期間からどれだけ上昇したかを表す。物価上昇率とも呼ばれる。

・GDP     国内総生産のこと。国の経済規模を表す。物価の上昇を考慮していないものを名目GDP、物価の上昇を考慮したものを実質GDPと呼ぶ。

・GDP成長率  GDPが前の期間からどれだけ上昇したかを表す。経済成長率とも呼ばれ、一般的には実質GDP成長率が用いられる。

・金融政策   中央銀行が様々な手法で金融市場に働きかけること。

・金融緩和   中央銀行が金融政策を用いて経済活動を促すこと。

・金融引き締め 中央銀行が金融政策を用いて経済活動を抑制すること。

・ハト派    金融緩和的な政策姿勢のこと。または金融緩和的な政策を支持する人のこと。

・タカ派    金融引き締め的な政策姿勢のこと。または金融引き締め的な政策を支持する人のこと。

金利変動リスクをコントロールするには?

友利:
前回のお話に戻って、金利変動リスクは金利が変動することで、保有する債券の価値が変動するリスクだということでしたね。

福室:
そうですね。
先ほどの例だと、インフレ率が上昇したり、景気が良くなったり、金融引き締め政策がとられたりすると金利が上昇して、債券価格が下落してしまい、結果的に債券ファンドの基準価額も下落するということです。

友利:
このリスクはコントロールできたりするものなんでしょうか?

福室:
金利変動リスクを見るうえで、デュレーションが重要になります。
細かい計算式は省きますが、デュレーションは金利が変動したときに、債券価格がどれだけ変動するかという指標です。

友利:
ひふみグローバル債券マザーファンドのデュレーションは、「ひふみらいと」の2021年6月末の月次運用レポートによると、7.3となっていますね。

ひふみグローバル債券マザーファンドの2021年6月末時点のポートフォリオ特性値

※「ポートフォリオ特性値」は、ファンドの組入債券等(現金等を含む)の各特性値(最終利回り、デュレーション)を、その組入比率で加重平均したものです 。(Bloombergの情報を基にレオス・キャピタルワークス株式会社作成)
※最終利回りは、ファンドが投資している債券等の特性を示すために各債券の利回りから算出したものであり、ファンドの運用成果を示唆、保証するものではありません。

福室:
デュレーションが7.3のとき、もし保有している債券の金利が全部1%上昇したとき、債券価格がおよそ7.3%下落するということになります。反対に、金利が1%下落すると債券価格はおよそ7.3%上昇します。デュレーションが長い(数値が大きい)と金利変動リスクが大きく、デュレーションが短い(数値が小さい)と金利変動リスクも小さいと思っていただいてよいと思います。

友利:
デュレーションの長短はどのように変えられるのでしょうか?

福室:
基本的には、債券のデュレーションは満期までの期間が長いと長くなります。満期までの期間を残存期間と言って、残存期間が長い債券を長期債、残存期間が短い債券を短期債と呼びます。長期債を多く組み入れるとデュレーションは長くなりますし、短期債を多く組み入れるとデュレーションは短くなります。また、現金は債券ではないのですが、金利変動の影響を受けないので、デュレーションは0と考えられます。したがって、現金比率が高くすると、ファンド全体のデュレーションは短くなると言えます。

友利:
なるほど。組み入れる債券や現金の比率を変えてデュレーションの長短を変えることで、金利変動リスクをコントロールしているわけですね。

福室:
そのとおりです。積極的な運用をする場合、金利が低下しそうだと思うと、金利低下の恩恵をより受けられるデュレーションの長い長期債を多く組み入れます。一方、金利が上昇すると考えると、金利上昇における損失が抑えられるように、デュレーションの短い短期債を多く組み入れるのが一般的です。

ただし、金利の動きは、発行している国や発行している通貨によって変わります。アメリカの金利の動きと日本の金利の動きは全く異なる動きをすることがあります。そのため、ひふみグローバル債券マザーファンドでは、ファンド全体のデュレーションの長さをコントロールしているわけではなく、国や通貨などのカテゴリーごとのデュレーションを細かくコントロールしています。

友利:
そうなのですね。私たちが見ているよりも、もっと細かく緻密なコントロールをされているんですね。金利の動きの予想というものはできるものなんでしょうか?

福室:
物価や景気に関連する経済指標や、金融政策を決定する中央銀行のメンバーの発言等はもちろん常にチェックしています。とはいえ、完全に金利の動き予想することは難しく、債券運用においては、想定されるリターンと、金利変動リスクも含めたリスクの大きさの両方をよく吟味して投資しています。

友利:
リスクの大きさに見合わない債券には投資しないということですね。

福室:
そのとおりです。

友利:
ひふみグローバル債券マザーファンドは新規設定から3カ月程度で+0.84%のリターンになっているので、このままいけば、単純計算で年間3%以上のリターンになりますよね。最終利回りは2021年6月末時点で0.55%とあるので、最終利回りを大きく上回っています。この要因は金利の変動によるものなんでしょうか?

福室:
そうですね。基本的には、金利低下による債券価格の上昇で基準価額が上昇しました。特に、アメリカの金利が大きく下がったことが大きいですね。デュレーションの長いアメリカの長期国債を多く組み入れていたことで、金利低下の恩恵をより大きく享受することができました。

友利:
おお!さすが福室先生です!今後も期待しています。

福室:
まだ3カ月の運用ではあるので、今後山あり谷ありになるかと思いますが、長期的によい運用成果を出せるようにがんばります。

用語MEMO

・デュレーション 金利の変動に対して債券価格がどれだけ変化するかを表す。デュレーションの値が大きいことを長い、デュレーションの値が小さいことを短いと表現する。

・残存期間    債券が満期を迎えるまでの期間。残存期間が長いとデュレーションも長く、残存期間が短いとデュレーションも短くなる傾向がある。

・短期債     残存期間の短い債券。デュレーションも短い傾向がある。

・長期債     残存期間の長い債券。デュレーションも長い傾向がある。

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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