投資信託はどう選ぶ?投資信託のパフォーマンス比較を考える(後編)【投資と上手に付き合う方法 #13】
- ひふみ投信の例
- 投資比率でリスクとリターンは調整できる
- シャープレシオはなぜ重要なのか
- シャープレシオの注意点
<プロフィール>
友利 駿介(ともり しゅんすけ)
沖縄県宜野湾市出身。
大学卒業後、2016年から国内大手資産運用会社で勤務した後、レオスやひふみの理念に共感し、2019年レオスへ転職。レオスでは経営企画を経験した後、現在は営業本部付。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。
ひふみ投信の例
「投資と上手に付き合う方法」の第13回です。前回まで、投資信託のパフォーマンス比較の項目や指標のひとつであるシャープレシオについてお伝えしてまいりました。今回は、なぜシャープレシオは重要なのかをお伝えしたいと思います。前回よりも発展的な内容になるので難しく感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、何かと参考になる指標かと思いますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
シャープレシオを掘り下げるために、以下のような状況で考えてみましょう。
皆さんがご自身の資産をひふみ投信と現金の2種類だけで保有するとします。
あらかじめ、資産のうち20%をひふみ投信に投資すると決め残りを現金で保有し、毎月月末になると所定の投資比率になるようにひふみ投信を売買するとします。計算を簡単にするために税金や手数料は考慮しておらず、無リスク資産のリターンは0%とします。
下の図は、ひふみ投信を常に資産総額の20%保有しようとしたときの過去10年間(2012年4月末から2022年4月末)の投資成果を表すグラフです。
ひふみ投信比率20%で投資をした場合の資産推移
※税金・手数料等は考慮していません。
過去10年間のひふみ投信は、リターンは+300.1%(年率+14.9%)ですが、資産全体のリターンは、+34.8%(年率+3.0%)でした。ひふみ投信の投資比率を20%にキープしたために、当然ながらリターンは小さくなっていますね。
一方、リスクを計算すると、ひふみ投信のリスクは年率15.9%で、資産全体のリスクは年率3.2%でした。
それぞれのシャープレシオを計算すると、ひふみ投信は0.94、資産全体では0.96という結果になりました。
※税金・手数料等は考慮していません。
※税金・手数料等は考慮していません。
これを見ると、リスク・リターンを示した点がほぼ一直線上に並んでいるのがお分かりになるでしょうか?
※税金・手数料等は考慮していません。
運用の手段がひふみ投信か現金かという2択しかなかったとしても、ひふみ投信の保有比率を調整すれば、この直線上ならリスクとリターンを調整することができます。逆に言えば、ひふみ投信の比率を一定に保つ運用の場合、この直線上から外れたリスク・リターンになることはありません。
シャープレシオはなぜ重要なのか
現金とファンドを組み合わせて保有する場合に、投資比率ごとのリスク・リターンの点が一直線上に並ぶというのは、ひふみ投信に限った話ではありません。前回例に出したファンドA、B、Cを再登場させてみます。
下の表がひふみ投信とファンドA、B、Cのリスク、リターン、シャープレシオですね。
※税金・手数料等は考慮していません。
仮に、皆さんが値動き(リスク)が大きい商品は避けたいと資産全体の年率リスクを5%くらいに抑えたいと思っていたとします。ひふみ投信の過去のパフォーマンスと未来のパフォーマンスが同じであるという前提のもとでは、投資比率100%で年率リスク15.9%ですから、ひふみ投信への投資比率を5%÷15.9%≒31%にしておくと、年率リスクがだいたい5%になります。
同じように、ファンドA、B、Cそれぞれと現金のポートフォリオで年率リスク5%を実現しようとすると、ファンドAの年率リスクは20%なので、ファンドAへの投資比率は5%÷20%=25%、ファンドBへの投資比率は5%÷10%=50%、ファンドCへの投資比率はファンドAと同じく25%です。
皆さんがこの4ファンドのどれか1つだけを選んで年率リスク5%の投資を行なう方法は、「ひふみ投信に31%投資」をするか、「ファンドAに25%投資」をするか、「ファンドBに50%投資」をするか、「ファンドCに25%投資」をするかです。
※税金・手数料等は考慮していません。
4つの選択肢それぞれの資産全体のリスク・リターンの図は上のものになります。
リスクの大きさが同程度の中で、「ファンドBに50%投資」が最もリターンが高いので、一番良い選択肢になります。これは、ファンドBのシャープレシオが4ファンドのうち最も高いためです。リスクの大きさが同程度になるように投資比率を調整した場合、常により高いリターンを稼ぐことができるのは、よりシャープレシオが高いファンドになります。
これが、シャープレシオが重要である理由です。今後のシャープレシオがあらかじめ分かっているという前提のもとで投資をする場合、まずシャープレシオが最も高いファンドを探し出して、あとはそのファンドへの投資比率をどれくらいにするかをその人のリスク許容度に合わせて決めればよいのです。
シャープレシオの注意点
今までの例で見てきた仮の世界と現実では色々な面でかい離がありますので、シャープレシオを実際に使おうと思うと注意すべき点がいくつかあります。
①今後のシャープレシオは分からない
パフォーマンス比較全般に当てはまる話なのですが、過去のパフォーマンスと将来のパフォーマンスは別のものです。過去のシャープレシオが高いからといって、将来もよいという保証はどこにもありません。
ただし、過去のシャープレシオが高いことには何らかの理由があるはずですから、その理由を知って、今後も期待できそうだと感じるのであれば、その商品を選ぶ理由になります。シャープレシオだけで判断するというよりも、シャープレシオをきっかけにファンドを調べてみるのもよいと思います。。
②期間ごとに水準は変わる
投資信託には基準価額の上下がつきものなので、特にリターンについては見る期間によって水準が大きくことなります。したがって、シャープレシオも期間ごとで大きく変動します。これもパフォーマンス比較全般なのですが、比較する期間はそろえる必要があります。
さらに言えば、リターンがマイナスになった時点でシャープレシオの意味はなくなりますので、比較的リターンが安定する長期間での比較が望ましいですね。
③リバランス(再配分)にはコストと手間がかかる
今回の記事では定期的にリバランスを行なって投資比率を一定にキープする前提でシャープレシオを計算していましたが、実際はリバランスには手数料や税金がかかる場合があり、想定どおりのリターンを上げられない可能性があることに注意をする必要があります。
また、リスクの大きさを一定程度に保つためのリバランスを定期的に行なうこと自体手間がかかりますから、実際にそれが難しいという方もいらっしゃると思います。ファンドの中で資産配分比率やリスクの大きさをコントロールするバランスファンド(ひふみらいとは前者です。)も世の中にはありますが、現金も含めた資産全体のポートフォリオはご自身で管理する必要があります。
④リスク・リターンの性質で結果が変わる
もちろんシャープレシオはリスクも考慮した指標ですから、仮の世界においてはリスクが違う商品であっても比較できるツールではあります。しかし、やはり現実はそうではありません。
例えば、株式ファンドと債券ファンドをシャープレシオで比較しようとすると、どうしても、よりリターンの振れ幅の大きい株式のパフォーマンス次第で結果は変わってしまいます。できれば、同じ資産クラス(国内株式など)内で比較するなど、なるべくリスク・リターンの性質の近いファンドとの比較が望ましいということになります。
また、大きなリスクを取ってでも高いリターンがほしいという人にとっては、シャープレシオの数値がいくら高くてもローリスクローリターンのファンドは選択肢に入りません。その場合はシャープレシオがローリスクローリターンのファンドより劣っていたとしても、ハイリスクハイリターンなファンドの中から投資対象を選ぶのがよいのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしょうか。この連載で初の3部作となってしまいました。ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。シャープレシオの意味がなんとなく分かったという方がいらっしゃればうれしいです。分かりにくい点などあればぜひアンケートでご回答ください!
※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。
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