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インバウンドで増える〇〇なホテルとは?【企業調査の最前線!コロナ禍以降の日本で起こっていること】

2023年は、日本株にとって転換の年だといえるかもしれません。
日経平均株価※はバブル崩壊後高値を更新、ニュースではインフレや大手企業の賃金上昇が話題になるなど、どうやらこれまでとは様子が異なるようです。
日本株にいったい何が起きているのか?この流れは今だけのものなのか?

この連載では、レオスのエコノミストやファンドマネージャーが日本株の今と未来への考察を語ります。「日本株のことが気になるけど、よくわからない」「いまから買っても間に合うの?」といった疑問について、一緒に考えていきましょう!

担当: 株式戦略部 アナリスト 松本
聴き手:レオス営業部兼ひふみ営業部 三田村

インバウンドから考える日本の変化

私は普段から仕事で出張に行くのですが、コロナ禍の収束以降、日本各地で外国人観光客を見かけることが多くなりました。

そうなんです。街中で行列ができているお店を眺めてみると、並んでいる人の多くが欧米からの観光客だったりしますよね。
2023年10月には、訪日外国人の数が2019年のピークを超えました。といっても、コロナ前は30%を占めていた中国人観光客が戻っておらず訪日外国人全体の10%程度にとどまっていることを考えると、まだまだふえそうです。

コロナ前の2019年には、年間約3,000万人が日本に訪れていました。それがコロナによってゼロになったんです。グラフを見ると、コロナ後に訪日外国人数が急激に回復しているのがわかりますよね。
一方で、数がふえているだけでなく質の面でも変化を感じる部分があります。それは何かというと、お金を使う人と使わない人が二極化しているということです。日本にやって来てお金を使う人たちは以前よりもっと大きな金額を使うようになっているし、使わない人は使いません。
世界的にみて、日本の物価はあまり変化がありません。しかし欧米ではインフレが進み、物価や賃金が上昇しています。

こちらは米国の賃金の推移を表したグラフです。賃金がふえて、旅行などに使うお金もふえているという状況です。
しかも、今すごく円安ですよね。
その通りですね。ドル、ユーロ、元の2019年からの為替レートを見てみましょう。

金利の影響力が大きいですが、ドル円はかなり円安の水準で安定している印象があります。
これらをふまえてインバウンドで注目すべき点は、次のようになります。

  • 訪日外国人数が2019年以来の高水準で戻ってきている
  • 訪日外国人ひとり当たりの賃金が上昇していて、購買力も高まっている
  • 円安でさらに訪日外国人の購買力が押し上げられる
欧米圏の人の購買力は、私たちが過去に経験したことがないくらいのものになると考えられます。

観光地でふえるラグジュアリーホテル

インバウンドに関連する代表的な業界といえばホテル業界です。ここ数年、コロナ禍で売上が激減し、雇用を維持できなくて働き手も減りました。そして今でも人手不足が解消されていません。しかし「かつてないビジネスチャンス」を迎えるインバウンドを、起業家や投資家は指をくわえて見ているだけなのでしょうか。チャンスを見逃したくないという人たちは、どうすると思いますか?
確かに、こんなチャンスを見逃すわけにいかないですよね…
ホテルの売上は、単価×宿泊者数で決まります。実はコロナ禍の間、ホテルで働く人が減ってしまったので、客室の稼働率を落とすことでサービスを向上させようという動きがありました。少ない顧客に対して、質の良いサービスを高単価で提供するというわけです。
人件費を抑えて、利益も出せるというわけですね!
こちらは全国のホテルの価格推移のイメージです。2023年になって、コロナ前を上回る水準になっていますね。

ポイントは「高単価」というところです。ホテル業界では、こうした価値観の転換が起きています。

さらに、サービスの質を高めることはもちろん、高価格帯のラグジュアリーホテルが次々に建設されています。購買力の高い訪日外国人に高い金額を払ってもらおうと、投資家はそこに着目したんですね。ホテルで働く人にとっても、高い賃金でゆとりあるサービスを提供できるメリットが生まれます。

東京に限らず、観光地として人気の京都でもラグジュアリーホテルが続々とオープンしています。
一方で、低価格のホテルも人気です。食事無しの宿泊にするなどサービスを限定することで価格を抑え、人手不足にも対応しています。ここでもラグジュアリー向けと庶民向けの、二極化が進んでいるように思います。

ホテル業界以外のところでは、どのような動きがありますか?
例えば、訪日観光客向けの鉄道パスが約40年ぶりに値上げしました。

ジャパン・レール・パス
日本全国で新幹線を含むJR路線が14日間乗り放題
4.7万円→8万円に値上げ

2週間も新幹線に乗り放題で4.7万円というのは、そもそも安すぎるという話ですが…。
高品質なサービスの利用に対して「原価の積み上げ」で値段を付けるのではなく、「付加価値」をベースに値段を付けてほしいと思います。

前回、内藤がお話した「PBRの低い企業」(https://hifumi.rheos.jp/labo/2023/iijanjapan03.html)は、「本来もっと稼げるはずなのに、稼げていないですよね」と市場から低く評価されているわけです。そうした企業がサービスや商品を安く売りすぎていることに気づくと、価格を上げることで利益を拡大させることができます。そして業績が上がれば、株式市場の評価も上がりますね。

インバウンドの「爆買い」は今どうなっている?

コロナ前は訪日外国人の「爆買い」が話題になっていましたが、現在はどうなっているのでしょうか?
実は、コロナ前と比べてドラッグストアの売上が1.2~1.5倍になっていて、企業は想定外の儲けが出て株価も上がってきています。私はアナリストなので、社内のミーティングで「この企業が良いです」とファンドマネージャーに推薦するのですが、声を張りながら推していたところです。
そうなんですか!それくらい松本さんが「注目するポイント」なのですね。
さらに円安の影響で、日本のラグジュアリー商品が世界的に安い水準になっています。訪日外国人が好んで訪問する百貨店では店舗限定商品なども人気があって、売り上げの実績がコロナ前と比べて140~170%です!これはもう、とんでもない数字ですよ。
売上がそんなにふえているとなると、利益も相当なものですね。
そこが難しいところで、百貨店というのは「店舗」を構えていますので固定費が重いうえにラグジュアリー商品は利益率が低いのです。企業の最終的な儲け(利益)について考える場合、例えば化粧品など「粗利率の高い商品」が売れるかどうかに注目するのが大事です。

日本人の購買行動はどうなったのか

百貨店の売上がこれほどふえた理由は、インバウンドだけでは説明できない部分があります。海外旅行に行かない日本人が、国内で消費をしています。海外に行く日本人の数は、コロナ前の水準に回復していません。
こんなに円安だと、海外には行きにくいですね。インバウンドは日本が「外貨」を獲得する手段として今後も力を入れていく分野だと思いますので、これからますます期待できそうです!

次回は、高騰する食品価格とその影響についてお伝えします!


※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。
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