SaaS(サーズ)の死――― AI時代、ソフトウェア関連企業の未来はどうなる?
2026年2月、株式市場においてソフトウェア関連企業の株価が大きく下落しました。近年、目覚ましい進歩を遂げているAIによって、これまでソフトウェアが担ってきた役割が奪われてしまうのではないか、という考えが投資家の間で広がっています。
ひふみの運用メンバーはソフトウェア関連企業の今後をどのように考えているのか、成長が期待できるところはまだあるのか、解説していきます。
※当記事は2026年2月12日開催の「ひふみアカデミー」より一部を編集しております。
〈語り手プロフィール〉
運用副本部長 兼 海外株式戦略部長
シニア・ファンドマネージャー
高橋 亮 たかはし りょう
2001年、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2004年、あおぞら銀行入行。2006年、三井住友アセットマネジメント入社。外国株式のアナリスト業務に従事、ニューヨーク駐在を経験。2013年、朝日ライフアセットマネジメント入社、外国株式のファンドマネジメント業務に従事。2015年、New York University Stern School of Business 修了。
〈語り手プロフィール〉
国内株式戦略部長
シニア・ファンドマネージャー
内藤 誠 ないとう まこと
同志社大学、東北大学大学院理学研究科数学専攻修了後、三井住友信託銀行に入行。 2018年、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社へ出向。定量分析やクオンツファンドの開発・運用に従事。
東京都立大学大学院経営学研究科に在籍し、数理ファイナンスや実証ファイナンス、機械学習分野での研究活動に従事。2022年1月にレオス・キャピタルワークス入社。
〈語り手プロフィール〉
小型株式戦略部長
シニア・ファンドマネージャー
並木 浩二 なみき こうじ
1998年大学卒業後、日興證券入社。日系証券会社、外資系運用会社にて、日本株のアナリスト・ファンドマネージャー業務に従事する。2024年12月にレオス・キャピタルワークス入社。
AIの台頭と「SaaSの死」 ソフトウェア関連企業の株価が下落
(高橋):SaaS(サーズ)とは「Software as a Service」の略称で、「サービスとしてのソフトウェア」を意味します。以前のソフトウェアの購入モデルはある特定のバージョンの半永久的利用権に対して一括で支払いを行なっていましたが、SaaSでは月額課金の「サブスクリプション」での契約となり課金を継続する限りは新しいバージョンの利用も可能になるなど、ソフトウェアメーカーと顧客の関係が一変しました。アドビが提供するソフトウェアの月額課金サービスなどは、よく知られていますね。
ところが、最近になって「SaaS is Dead(SaaSの死)」という言葉をよく聞くようになりました。AIの登場によって、従来のSaaSは駆逐されていく、という考え方です。
2026年2月初め、世界中でソフトウェア関連企業の株価が大きく下落しました。この下落のきっかけとなったのは、AIの開発を行なうスタートアップ企業アンソロピックが「Claude Cowork」および「Claude Code」という革新的なAIサービスを発表したことでした。
安価で優秀なAIサービスが登場したことで、株式市場において“AIが在来のSaaSを代替するのではないか”という懸念が強まり株価下落につながりました。
「ChatGPT」や「Gemini」といった、近年急速に広がる月額課金制のAIツールについても広い意味ではSaaSとみなすことができますが、SaaS is Deadで言われるところのSaaSとは、AIが搭載されていない在来のSaaSを指します。
“非AI”のSaaSを提供する企業がAIに価値を奪われていくという流れは、世界中で発生しており、今後もある程度は避けられないものであると考えています。例えば、AIに素材をアップロードするだけで、簡単に画像や動画の編集を行なうことができるようになりました。これはPhotoshopやPremiere proなどの画像・動画編集ツールがいらなくなる可能性があるということです。また、AIを活用したプレゼンテーション資料作成ツールも多く登場しています。もしかしたら近い将来、PowerPointがいらない世界がやってくるのかもしれません。
経理や人事といった専門性が求められる分野においても、AIが正確なアウトプットを行なうようになってきました。このため業務用のソフトウェアを提供する企業においても、AIに代替されるリスクが否定できなくなっています。
かつて、アメリカのベンチャーキャピタリストであるマーク・アンドリーセン氏がソフトウェアの成長を“Software is eating the World(ソフトウェアが世界を飲み込む)”と形容しましたが、今後は“AI is eating Software(AIがソフトウェアを飲み込む)”となるのかもしれません。
株価下落の原因は“不透明感”
(並木):どのような業界においても、新しい技術が古い技術を代替するという変化は発生します。高橋が話したように、AIがソフトウェアに取って代わるという流れは起こるものだと予想できます。
一方で、足元の株式市場を考えるうえではより冷静な視点が必要です。AIによってソフトウェアが置き換わる、と短絡的に考えすぎることは行き過ぎていると感じます。
株式市場においては、不透明な要素が増えるほど株価下落につながりやすくなります。今回のソフトウェア関連株の下落についても、AIの進歩によってソフトウェアがこれまでのような成長が期待できなくなるのではないか、という不安から発生したものです。しかし、このような下落局面がずっと続くとは限りません。不透明感が晴れる局面では、ソフトウェア関連株も上昇に転じると考えられます。
2025年1月、中国のAI開発企業ディープシーク(深度求索)が低コストで開発されていながら高い性能を持つ新モデルを発表すると、アメリカのAI開発の優位性に不安が生じ、米ハイテク株が大きく下落しました。

(期間):2024年12月~2025年10月
Bloomberg掲載情報を基にレオス・キャピタルワークスが作成
しかし、下落がいつまでも続いたわけではありません。例えば、米ハイテク企業の代表ともいえるエヌビディア(NVDA)の株価を見てみると、一時的な調整があったものの2025年4月ごろからは株価上昇に転じています。
今回のソフトウェア関連株の下落についても、長期的な下落トレンドとなるのか、一時的な調整に留まるのか、株式市場を注視しながら運用を続けていくべきだといえます。
富士通に日本電気(NEC) 日本のソフトウェア関連企業は「防衛銘柄」でもある
(内藤):ひふみ投信マザーファンドにおいてもソフトウェア関連企業の投資を行なっています。2026年1月末時点での組み入れ銘柄の中であれば、NEC(6701)や富士通(6702)などがあります。これらの企業の株価も2026年2月に大きく下落しました。

(期間):2025年12月1日~2026年3月6日
Bloomberg掲載情報を基にレオス・キャピタルワークスが作成
しかしながら、現時点では富士通やNECの将来性に悲観的な考えはもっていません。むしろ長期で成長が期待できる企業と考え、投資を継続しています。
成長が期待できる要因として、日本のDX遅れが挙げられます。日本は欧米先進国と比較するとまだまだDXが遅れている部分が見られ、この2社は遅れを立ち直らせてくれる企業として期待しています。
さらに、今回はAIに喰われるソフトウェア企業と見なされて株価が下落したわけですが、同時に防衛関連の事業を手掛ける企業でもあります。防衛産業は高市新政権が重要視している分野の一つであり、今後投資が加速することが期待できます。
AIの登場によって揺らいでいるSaaSの業界でも、長期の成長が期待できる企業は存在します。先ほど並木が話したように、不透明感から生じる株価下落に影響されすぎずに、これからも活躍が期待できる企業はどこかを考え、投資を継続していくことが重要です。
ひふみシリーズの運用メンバーが月次の運用報告を行う「ひふみアカデミー」。毎月の運用報告を行なうだけでなく、旬のトピックや注目分野、投資に対するマインドなど、ひふみシリーズの運用メンバーが“今、考えていること”をお伝えする場でもあります。
本連載では、毎月のひふみアカデミーからトピックを厳選してお伝えしていきます。
「ひふみアカデミー」は動画でもご覧いただけます。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLkwGm3S_gh8S2ze4qSie9yAjrJidz3_7t
同じタグの記事を検索
#市場・経済を読み解く