地政学的リスクとの向き合い方 ファンドマネージャーが大切にする長期と短期の投資判断
2026年2月にはじまったアメリカ、イスラエルとイランの戦争。中東では不透明な情勢が続いています。地政学的リスクが高まる局面で、ひふみの運用メンバーはどのような考えで投資を行なうのか、解説していきます。
※当記事は2026年3月11日開催の「ひふみアカデミー」より一部を編集しております。
〈語り手プロフィール〉
代表取締役副社長 CIO(最高投資責任者)
ひふみワールド 運用責任者
湯浅 光裕 ゆあさ みつひろ
1990年ロスチャイルド・アセット・マネジメント入社、1993年日本株運用ファンドマネージャー就任、ロスチャイルドグループが海外で募集したユニットトラスト、年金資金の運用を担当する。2000年、ガートモア・アセットマネジメント入社、中小型株ファンドの運用担当。2003年、レオス・キャピタルワークス創業、取締役就任(現任)。投資信託「ひふみ」シリーズ最高投資責任者。シニア・ファンドマネージャーとして活躍、国内外資産運用業界について造詣が深い。
〈語り手プロフィール〉
運用副本部長 兼 海外株式戦略部長
シニア・ファンドマネージャー
高橋 亮 たかはし りょう
2001年、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2004年、あおぞら銀行入行。2006年、三井住友アセットマネジメント入社。外国株式のアナリスト業務に従事、ニューヨーク駐在を経験。2013年、朝日ライフアセットマネジメント入社、外国株式のファンドマネジメント業務に従事。2015年、New York University Stern School of Business 修了。
長期投資を前提に、足元のリスクに適切に対応
湯浅:2026年2月にはじまったアメリカ、イスラエルとイランの戦争は、世界経済に甚大な影響を与える可能性がある、大きな地政学的リスクです。戦争の舞台となっているイランは、海運の要所であるホルムズ海峡に面しています。中東で生産された原油・天然ガスの多くがこの海峡を通過して世界中に供給されているため、ホルムズ海峡周辺の不安定化は原油価格の高騰や物価高騰、エネルギー不足につながり、経済に打撃を与えます。
2026年4月8日にアメリカとイランの双方は停戦に合意したとの報道がありました。しかし、この停戦もいつまで継続されるか分からず、中東では不安定な状況が続いています。
昨今のイラン情勢のように、特定地域における地政学的リスクが高まる局面では以下の点を特に意識して運用を行ないます。
① 長期視点で利益を見込める投資対象を選定し、投資を継続する
② 短期視点で明確に予想できるリスクは避ける
①については、投資を行なう上で常に意識している点です。国際紛争はいつまでも続くものではありません。混乱が落ち着いた先の未来で値上がりを期待できる投資対象を見つけ出し投資していきます。
一方で、②にあるように短期的な視点で明確に予測できるリスクは避けることが賢明です。私たちはお客様からお預かりした大切な資産を運用しているわけですから、できるだけ損をすることは避けたいと考えます。長期視点で利益が見込めると考え投資した銘柄であっても、直近で値下がりするリスクが高いものについては、一時的に、投資額を減らしたり、すべて売却したりすることもあります。
高橋:湯浅が話したように、運用資産をできるだけ減らさずに可能な範囲でリスクを避けて運用を行なっていくことが私たちファンドマネージャーの仕事です。
この視点は、地政学的リスクに限らず、あらゆる場面で意識しています。
市場を注視し、地政学リスクの中にも投資機会を見つける
高橋:私たちはあくまでも投資家であり、地政学や国際政治の専門家ではありません。刻々と変化する国際情勢に一喜一憂するのではなく、金融市場を冷静に注視していく意識が求められます。
国際情勢の変化は金融市場に影響を及ぼしますが、必ずしも両者の動向が一致するわけではなく、時には大きなギャップが生まれます。地政学的にネガティブな出来事があったからといって株価が下落するかといわれると、必ずしもそうではありません。もちろん政治や国際関係に関するニュースは大切ですし、情報収集は怠りませんが、思い込みをもって市場を見ないようにすることも重要なのです。
また、地政学的リスクが高まる状況の中でも成長の芽を見出すことができる場合もあります。例えば、今回のホルムズ海峡封鎖を受けて、ひふみワールドマザーファンドではエネルギー関連企業の組入れ比率を増やす対応を行ないました。

※各比率はひふみワールドマザーファンドの純資産総額に対する比率です。比率は小数点第三位を四捨五入して表示しているため、合計が100%にならない場合があります。
※比率は株式における上位10種を表示し以降は「その他の業種」としています。業種は原則としてGICS(世界産業分類基準)の産業グループ分類に準じて表示しています。
求められる“投資”と“運用”という2つの視点
湯浅:私はファンドマネージャーの仕事を“投資”と”運用”の2つであると考えています。“投資”は成長が期待できる企業を発掘し、長期で応援していくこと。“運用”は金融市場の変化に柔軟に対応し、適切にリスクを管理すること。どちらも欠かすことができない、重要な考え方です。
依然、中東の地政学的リスクが高い状況ではありますが、冷静に金融市場を注視し続け、短期で見えているリスクは避けられるよう機動的な運用を行なうとともに、長期視点では “こんな未来になったらいいな”という絵を描き、腹をくくって投資を継続していきます。
ひふみシリーズの運用メンバーが月次の運用報告を行なう「ひふみアカデミー」。毎月の運用報告を行なうだけでなく、旬のトピックや注目分野、投資に対するマインドなど、ひふみシリーズの運用メンバーが“今、考えていること”をお伝えする場でもあります。
本連載では、毎月のひふみアカデミーからトピックを厳選してお伝えしていきます。
「ひふみアカデミー」は動画でもご覧いただけます。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLkwGm3S_gh8S2ze4qSie9yAjrJidz3_7t
※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。
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