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基準価額が高いとダメ? 「投資信託の値段」を考える(前編) 【投資と上手に付き合う方法 #5】

投資運用会社レオス・キャピタルワークスの社員である友利が、SNSなど皆様の身近なところで目にする投資信託に関する話題から、投資と上手に付き合う方法を考えていく連載です。連載を通じて、皆様の投資や投資信託に関する理解が深まることを目指しています!前回の記事はこちら

この記事のポイント

  • 基準価額は「投資信託の値段」なのか?
  • 改めて、基準価額とは何か
  • 基準価額の変動の原因

<プロフィール>
友利 駿介(ともり しゅんすけ)
沖縄県宜野湾市出身。
大学卒業後、2016年から国内大手資産運用会社で勤務した後、レオスやひふみの理念に共感し、2019年レオスへ転職。レオスでは経営企画を経験した後、営業本部に異動し、現在はダイレクト営業部、パートナー営業部、未来事業室を兼務。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。

基準価額は「投資信託の値段」なのか?

「投資と上手に付き合う方法」の第5回です!第4回から間が空いてしまいました。これまでの記事をお読みになっていただいた方、ありがとうございます!
記事を読んでいると右下にアンケートのポップアップが表示されますが、お時間ある方はアンケートにご協力いただけると嬉しいです!いただいたコメントは目を通して励みにいたしております。

さて今回は、「投資信託の値段」というテーマです。「投資信託の値段」と表現される基準価額について語ってみようと思います。長くなってしまうので前編と後編に分けてご説明します。ぜひ後編もお読みください。

「投資信託の値段」という表現はそれ以外に言いようがないので私も使ってしまうのですが、もしかしたらここに誤解のある方がいるのかもと思っています。

モノの値段とは、例えばポテトチップスなら1袋200円など、モノ1つに対していくらなのかで扱われることが多いですよね。
ただ、お肉を買うときなどは、100gでいくらかというように量り売りでお肉の分量に応じて値段が決まる場合もあります。100gで250円のお肉なら、200g買えば500円ですよね。

投資信託の値段は、後者の量り売りをイメージするとわかりやすいかもしれません。

まず、ポテトチップスが一袋、お肉がグラムで表されるように、投資信託の売り買いの単位は「口(くち)」です。例えば、「私は、ひふみ投信を1万口持っています」と表します。
そして投資信託の値段にあたる基準価額(きじゅんかがく)は1万口あたりの値段が表示され、日々更新されます。

先ほどのお肉の例で「1,000円分欲しい」と注文した場合、1,000円÷250円×100gで、400gのお肉を買うことができるように、投資信託も、1,000円分だけとか、1万円分だけとか、金額を指定して購入することができます。
(※最低投資金額は販売会社によって異なります。当社の直販なら1,000円から購入ができます。)

さらに付け加えますと、お肉はおいしく食べることに価値があるかと思いますが、多くの人にとって、投資信託は保有した時点で何か幸せになったりうれしくなったりはしないと思います。
投資信託を保有する目的はやはり、投資信託の価値が上がることで資産を増やすことですよね。そのため、投資信託では、値段そのものよりは、その値段が上がるか下がるかが重要です。
商品を消費したり使ったりする場合と、商品を保有して価値の上昇を期待する場合とでは、「値段」の意味が違うように思います。

ここまで説明したうえで、「1万口あたり」ってどういうこと?と思われた方もいらっしゃると思いますので、基準価額についてのご説明をしようと思います。

なお、「基準価額とは何か」という記事は世の中にもたくさんありますし、当社でも以前別の記事で説明しているので、内容が重複するところも多々あるかと思いますがご容赦ください。

基準価額についてご説明しているひふみラボの記事はこちら↓
「基準価額」はどうやって見たらいい? 【基礎からわかる投資信託#5】

改めて、基準価額とは何か

まずは改めてポイントを整理したいと思います。

まず、重要なのは次の式です。

基準価額は純資産総額を受益権総口数で割ったものということですね。
最後に10,000をかけているのは、基準価額が1万口あたりで表されるからです。

純資産総額とは、投資信託の保有する資産の時価評価額を合計から信託報酬(運用管理費用)等を差し引いたものです。
そして、受益権総口数(単に総口数とも言います)は、投資信託の取引単位である口数の合計になります。

以上が正確な説明なのですが、ご理解のために簡単な例を使って説明したいと思います。

まず、設定されたばかりの投資信託(仮に「投資上手ファンド」と名付けます!)が、投資家の皆さんから合計1億円の資金を集めたとします。「投資上手ファンド」の運用開始時点では、純資産総額は1億円です。

次に受益権総口数ですが、これは1億口になります。
なぜかというと、投資信託では、運用開始時点の基準価額を1万円ぴったりにすることが一般的だからです。
基準価額が1万円ということは、1万口あたり1万円、つまり1口=1円で口数が設定されることになります。

「投資上手ファンド」の純資産総額は1億円のため、総口数も1億口に設定されるということです。
運用開始時点の総口数は、運用開始時点の基準価額が1万円になるように設定されるものだと思っていただければと思います。

基準価額の変動の要因

おさらいをしたところで、基準価額が変動するのはなぜかということについてご説明したいと思います。

いくつか要因がありますが、主な要因として投資信託の保有資産の時価の変動があげられます。
先ほどの「投資上手ファンド」は、運用開始直後に次の図のとおり株式A、B、Cに投資をしたとします。

その後、株式Aの株価だけが1,500円に上昇したとすると、株式Aの時価評価額が2,000万円から3,000万円になり、純資産総額は1,000万円増加します。(本来、純資産総額は時価評価額の合計から信託報酬等を差し引かなければいけないのですが、簡単にするために無視しています。以下同じです。)


純資産総額は1億1,000万円になっていますが、総口数は1億口のままなので、1億1,000万円÷1億口×1万ということで、基準価額は11,000円です。
これが保有資産の時価変動によって基準価額が変動するパターンですね。



次に、投資信託が分配金を払い出す場合も基準価額は変動します
「投資上手ファンド」が運用開始直後に1万口あたり1,000円の分配金を払い出すとします。
総口数は1億口ですから、払い出す金額の合計は1億口÷1万口×1,000円で、1,000万円になります。分配金はファンドの資産から払い出すため、1,000万円が純資産総額から差し引かれます。分配金払い出し後の純資産総額は9,000万円です。
分配金を払い出す場合も総口数は1億口で変わらないので、9,000万円÷1億口×1万円で、基準価額は9,000円になります。



先ほどから、受益権総口数が変わらないパターンを説明しているのですが、投資信託の総口数が変動するのは、運用開始後に投資信託の売買が行なわれた場合です。

「投資上手ファンド」の基準価額が1万円のときに1,000万円を追加投資する人がいたとします。
基準価額は1万円ですから、1口=1円ということでその人は1,000万口取得することができます。
この人がここで取得した1,000万口は、総口数にそのまま追加されます。

また、「投資上手ファンド」に新たに1,000万円の資金が流入することになるので、分母の総口数と同じく、分子の純資産総額も1,000万円増加します。
基準価額を決める分母と分子の両方が同じ割合で増加するので、この場合、基準価額は変動しません。

したがって、これまで「投資上手ファンド」を保有していた投資家の方の保有資産額は変動しないので、投資信託の売買が既存の投資家の保有資産額に影響を与えないような仕組みになっています。

これは投資信託を売却する場合も同じです。先ほどの購入の後、投資上手ファンドを2,000万円売却する人がいた場合、純資産総額は9,000万円、総口数も9,000万口とやはり同じだけ減少するので、基準価額は変動しません。





なお、基準価額が1万円の場合でなくとも、純資産総額と総口数が同じ割合で変化する仕組みになっているので基準価額は変動しないようになっています。

基準価額の仕組みについておおよそご理解いただけたでしょうか。次回は基準価額についてよくあるご質問にお答えしていきますので、後編もぜひお読みください!


※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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