中央銀行とその役割とは?【市況のいろはを学ぼう!〜はじめての市況解説〜 #3】
こんにちは、ひふみラボ編集部の沼尾です。
「市況のいろはを学ぼう!」最終回です!
この連載では、投資を始めたばかりの方、これから投資を始めようと思っている方へ向けてテレビ・ラジオのニュースで流れてくる金融・経済にまつわる専門用語の意味や、その用語の背景についてレオスのトレーダーに質問する形式で説明していきます!
専門用語を理解しニュースをより一層解像度高く読み込めるようになると、金融・経済を身近に感じられて楽しくなると思います。この機会に、私と一緒に「市況のいろは」を学んでみましょう!
解説してくれるのは、引き続きトレーディング部の佐々木志保さんです。
佐々木 志保(ささき しほ)
2016年新卒で証券会社に入社、2018年からレオス・キャピタルワークスへ。2019年からトレーディング業務に従事。
沼尾 紗耶(ぬまお さや)
イベント制作会社を経て2021年11月にレオス・キャピタルワークスへ入社。毎営業日の「レオスの市況解説」の編集を担当している。
中央銀行について
沼尾:「レオスの市況解説」ではアメリカの「FRB」という言葉が頻繁に出てくるのですが、「FRB」とはどんな機関なのでしょう?
佐々木:FRBはFederal Reserve Boardの略で、連邦準備理事会と呼ばれる機関です。Fedと呼ばれることもあります。連邦準備理事会と言われると分かりにくいですが、日銀と同じくアメリカの中央銀行になります。
沼尾:アメリカの中央銀行のことだったんですね!
佐々木:中央銀行にはさまざまな役割がありますが、市況解説では主に金融政策に関連する場面で取り挙げています。金融政策を策定する組織が中央銀行であり、各国の中央銀行の役割は厳密には異なります。例えば、日銀の目的は物価の安定を図ること(および金融システムの安定に貢献すること。日本銀行法第1条第2項)ですが、アメリカのFRBでは物価の安定と雇用の最大化が主な目的とされています。
ちなみに、欧州中央銀行(ECB)も物価の安定維持を最重要課題としています。
沼尾:最近は物価上昇の話題が尽きませんが、日銀やFRBも物価上昇に対して何か対策をしているのでしょうか?
佐々木:ここ数年の物価上昇は、新型コロナウイルスの影響による供給制限やロシアのウクライナ侵攻、中東情勢などが背景にあり、それが世界的なインフレに繋がったと言われています。物価が上昇し続けると生活に影響を与えるため、各国の中央銀行が金利の調整などの金融政策を実施して、景気の安定化を図っています。
中央銀行の政策発表も市況解説でお伝えすることが多いです。特に、アメリカのFRBが重要な金融政策を決定するFOMCという会合は、マーケットに大きな影響を与えるため、頻繁に紹介しています。
沼尾:たしかに、市況解説でも「FOMC」のワードをよく目にしますね。
佐々木: FOMCは約6週間ごとに年8回、定期的に開催されますが、必要に応じて随時開催されることもあるので、かなり頻繁に登場しますね。また各国の中央銀行が金融政策を決定する際には、「マクロ経済指標」というものが参考にされます。
マクロ経済指標とは?
佐々木:マクロ経済指標とは、その国の景気が回復状態にあるのか、後退しているのかを示すものです。市況解説では、「一国の経済活動の様子を統計として示す数値」を経済指標として紹介しています。
マクロ経済指標と呼ばれるものの代表例を挙げると、「雇用統計」「消費者物価指数」などといったものがあります。これらが発表される日を「注目日程」としてお伝えしています。
沼尾:「雇用統計」や「消費者物価指数」というワードは市況解説でよく登場しますね!
佐々木:はい。今挙げた経済指標を簡単に説明します。
「雇用統計」は米労働省労働統計局(BLS)が、労働者の雇用状況を調査した指標で毎月第1金曜日に発表されます。
「消費者物価指数」はアメリカ国内の物価の上昇・下降などの変動を表す経済指数で、米労働省が毎月中旬に公表しています。アメリカの国民の生活水準を示す指標のひとつとして重要視されています。
沼尾:全て生活をしていく上で大切な指標と感じますね。ちなみに私は「レオスの市況解説」の編集に関わるようになってから、毎月発表される「雇用統計」の時期になると、「前回の雇用統計からもう1カ月経ったんだ!」と時の流れを感じます(笑)
では雇用統計が発表されて、雇用者数が増加した場合、マーケットはどんな反応をするのでしょうか?
佐々木:雇用者数の増加はアメリカ経済の強さを示すため、FRBが今後金利を引き上げる可能性が高まります。金利が上がると、米ドルの価値が上昇し、円の価値が下がる、ドル高・円安の動きが進むことが予想されます。これにより、日本では特に輸出企業にプラスの影響が出ます。例えば、自動車や電子機器メーカーなどは、海外で売り上げた外貨を円に戻す際に円安の方が額面上、利益が増えると期待されます。その結果、輸出関連企業の株価が上昇することが多く見られます。
また、GDP(国内総生産)が世界のトップであるアメリカ経済が好調であれば世界経済全体にポジティブな影響を与えるため、日本の投資家の心理も改善し、日本の株式市場全体が上昇する傾向が強まります。
沼尾:なるほど~。アメリカ経済の動きは日本経済、いや世界経済に大きな影響を与えるのですね。
これまで全3回学んできて、いろんな情報が飛び交っていて、国内だけではなくアメリカなど世界の出来事が要因でマーケットが動くことが分かりました。トレーダーの方はその都度、どのように対応されるのでしょうか?
トレーダーの重要な役割
佐々木:ここで初回の質問に戻りますが、「トレーダーとは何か」という話になります。
レオスの場合、ファンドマネージャー(FM)から受けた注文はその日限りのものが多いので、私たちの仕事はその日のマーケットでどれだけ最良のパフォーマンスが出せるかにかかっています。個別銘柄の価格は、これまでお話してきたさまざまな要因によって変動しますが、基本的にやるべきことはシンプルです。買い注文ならできるだけ安く買い、売り注文なら高く売ることで、ファンドの運用に貢献します。
相場が変動したり、変動しそうなときは、ファンドマネージャーとコミュニケーションをとりながら、どのような意図でどれくらいの注文を出すか、またファンドマネージャーがキャッシュ比率を増やすかどうかといった重要な判断を行ない、私たちはそれに沿って執行します。
また、注文を受ける証券会社と、注文を出す運用会社のトレーダー間では、毎日「今日はどの主体がアクティブに動いているか」といった噂話が流れてきます。実際に売買を行う際には、いかにコストを抑えて売買を執行するかが重要で、上記のような他社のフローに左右されず、また市場へのインパクトを抑える為になるべく自社の手の内を見せないように執行することが求められ、これがトレーダーの評価ポイントでもあります。
沼尾:トレーダーの手腕が試されるポイントは、そういったところにあるのですね。まるで職人さんのような仕事ですね!
佐々木:はい。ちなみにこれは余談ですが、トレーダーに限らず、金融業界の方は食事がとても早い印象があります。私が就職したばかりの頃は、「いつ食べたの?」と思うくらい皆さんの食事ペースが早くて驚きました(笑)。
沼尾:たしかに、私も以前、藤野さんとランチをご一緒した際、食べるスピードがあまりにも早くてびっくりした記憶があります(笑)。市場はランチタイムがあっても、トレーダーは気が抜けませんね。
佐々木:そうですね!
佐々木さん、今回も分かりやすくご説明いただきありがとうございます!皆さん、今回のテーマはいかがでしたでしょうか?
この連載をふまえて、毎営業日更新される「レオスの市況解説」をぜひ読んでみてください。「市況のいろは」が身についていることを願っています!
※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。
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